聖護院 京極のブログ

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通貨スワップと為替スワップ違い

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アメリ連邦準備銀行 画像出典:Wikipedia

 

通貨スワップと為替スワップの違い(韓国のケース)

通貨スワップと為替スワップの違いをご存知でしょうか。通貨スワップは経済に少し興味のある方なら、大抵ご存知です。しかし、為替スワップは殆どの方がご存知ないと思います。

 

そこで、両者の違いを見てみましょう。複雑な仕組みなので、非常に大雑把に言えば次のような違いがあります。

 

■ 通貨スワップとは、国と国のお互いの通貨の融通です。

・国同士の中央銀行同士で互いの通貨を交換します。

自国の通貨危機が起きた際、自国通貨の預け入れと引き換えに、協定を結んだ相手国の通貨をあらかじめ定めたレートで融通してもらえる協定です。中央銀行同士の融通であり、目的は自国の通貨のおもに通貨安への極端な変動の防止にあります。

 

 

■ 為替スワップとは、ある国からある国への民間企業への通貨の融通です。

あるの国の中央銀行からある国の民間銀行へ通貨を融通します。

通貨スワップとの違いは、ここで通貨融通は、あくまで民間銀行への融資であり、中央銀行が為替介入には使えないということです。各国の中央銀行経由で各民間銀行にある国から直接の、ある国の通貨の貸付です。(ほとんどの場合、ある国とはアメリカです)

 

 この違いを、頭に入れて次の記事を見ましょう。

 

 

韓米が通貨スワップ協定 600億ドル規模

Write: 2020-03-20 10:49:56Update: 2020-03-20 16:06:50

韓国銀行は19日、アメリFRB連邦準備制度理事会と600億ドルの通貨スワップ協定を締結したと発表しました。
期限は最短でことし9月19日までとなっています。
通貨スワップ協定とは、どちらかの国が通貨危機などに陥った場合に一方の国がドルなどを貸し出すもので、韓米の通貨スワップは、世界的な金融危機当時の2008年10月に300億ドル規模の通貨スワップを締結したのに続いて2回目です。
韓国銀行は「協定をとおして調達したアメリカ・ドルを即時に供給することで、ドルの需要不均衡によりウォン安が急速に進む国内為替市場の安定化に寄与する」と期待しています。

(後略)(引用先:韓国 KBSWORLD)

 

続きは、下記のサイトへどうぞ。

韓米が通貨スワップ協定 600億ドル規模 l KBS WORLD Radio

 

この記事は他の韓国メディアと同様に「通貨スワップ」としています。しかし、実際には「為替スワップ」とすべき記事です。

 

次の記事は日本の公的機関である「日本貿易振興機構JETRO)」の同時期同日のアメリカと韓国のスワップ締結の記事です。JETROは、正確に「韓国銀行、米FRBと為替スワップ契約の締結」と明言しています。

 

 韓国銀行、米FRBと為替スワップ契約を締結

 日本貿易振興機構JETRO

韓国銀行(中央銀行)は3月19日、米国連邦準備理事会(米FRB)と600億ドル規模の2国間為替スワップ契約を締結すると発表した。

今回の協定は、米FRBと5カ国・地域の中央銀行(注)間で結ばれた常設の為替スワップ契約に加え、急激に加速した外国為替市場におけるドル資金の逼迫解消を目的としており、期限は最低6カ月(9月19日まで)。

韓国銀行は、為替スワップ契約を通じて調達した米ドルを直ちに市場に供給し、急激なウォン安ドル高が進んでいる国内為替市場の安定化を期待してい

る。また、今後も主要国中央銀行との協力を通じ、金融市場の安定化に向けた努力を続けていくと表明した。

FRBは韓国のほか、デンマークノルウェースウェーデン、オーストラリア、ニュージーランド、ブラジル、メキシコの各中央銀行シンガポール金融管理局とも同時に為替スワップ契約を締結すると発表した。(後略)

(引用ここまで)(続きは下記のウェブサイトでどうぞ)

www.jetro.go.jp 

 

韓国銀行自体は、「為替スワップ」と認識しているようですね。しかし、国内向けには、「通貨スワップ」と発表した疑いがあります。

 

■ 為替スワップを通貨スワップという必要があるのか?

それは、現在のウォンのドルに対してウォンが大幅に安くなっているからです。つまり、ウォン安です。それは、韓国経済に対する不信に起因しています。どうも経済が怪しいぞ、という訳です。ですから国内外に通貨安に対して、「アメリカと通貨スワップを交わしたから、大丈夫だ」とアナウンスしたいからでしょう。こうした誤魔化しは国外によりも韓国内にとって有害です

 

 ■ なぜウォン安になっているのか?

韓国は、ドイツなどと同様に大変輸出比率が大きな国です。GDPの7割近くをどこかの国への輸出に当てています。これは、国内の企業が生産しても、国内で消費することが出来ないためです。要するに、生産しても国内に需要がないのです。

 

であってみれば、輸出するしかありません。国内の需要の合わせて生産を行なえば、すべての企業が破綻してしまいます。この、輸出は、もう引くに引けない状態なのです。企業を維持するためには、なんとしても輸出を続ける、或いは輸出を拡大するしかありません。

 

しかし、新コロナウィルスの世界的な流行で、韓国の輸出先においても、韓国の輸出を受け入れるだけの経済的余力も需要も衰退しています。そういう事実が、貿易統計にも表れています。

 

海外の投資家は、「このまま、韓国に投資をしてもリスクは大きいし、リターンも期待できない」と感じるのは当然のことで、韓国内で投資して得たウォンをドルに交換して持ち出そうとしても、ドルに対して今のようにどんどんウォン安が進んだり、安いままの位置で留まったりしている現状では、ウォンをドルに交換しても儲けが出ないということになります。

 

「一旦、ドルを引き上げよう」

 

となるのは当然でしょう。そうなると、ウォンはさらに安くなる可能性が高くなります。韓国の中央銀行は、ウォンを買ってドルを売る為替介入に入ることになります。放っておくと、通貨が暴落する可能性があるからです。ウォンが国内にだぶついているが、輸入品は高騰して買えなくなりますし、輸出はウォン安で進みますが、ウォン安である現状からは、加工貿易国である韓国は、輸入品が高くつき、それ程安くは売れません。今のように安くても需要がない世界の国々であれば、もう輸出による外貨獲得は細る一方です。

 

 

■ 為替スワップの使い道

しかし、支払いは外貨で行わねばなりませんから、ウォンは国内にだぶついているものの、ドルは足りていないということになります。韓国内の企業と民間銀行はウォン安でドル需要逼迫であり、これを解消するには、民間にドルを注入する必要があります。今回の為替スワップは、民間のドル不足を解消のために、韓国中央銀行アメリカから借りたドルであるといえます。あくまで、民間の企業のドル不足を解消するためのものです。

 

 

 

為替スワップは韓国内企業あるいは、韓国内に進出している外国企業などの、ドル不足を解消しようとするものです。ドルによる決済以外に貿易の決済はあり得ません。しかし、韓国に進出の外国企業が、韓国での投資を引き揚げ始めている現在では、韓国内からどんどんとドルが流出が続いています。

 

それは、例えば人間の体から失血するようなものです。ドルがなくなれば、企業ももはや、倒産しかありません。そのために、韓国はウォンを抵当に、ドルの供給を受けたのです。しかし、9月末までの期限ですので、その期に返済できるでしょうか?改めて借り直すことになるでしょうね。

 

■ 通貨スワップではなく、為替スワップだった証拠

通貨スワップと発表したものの実際には「為替スワップ」であったため、スワップ締結後もドルに対してウォンは、ウォン高には動きませんでしたし、それは、現在(この記事入力中の5月2日)でも、ウォン安は解消されておらず、しかも、ウォン安にともすれば動きがちです。ウォンは本来1ドル=980-1000ウォン程度が一番好ましいのです。

 

韓国政府は、通貨安によるウォン安のために外貨準備からドルを売って、ウォンを買う為替介入を行いながら、片方ではドル不足に苦しむ国内企業、国内に投資している外国の投資家のために、ドルを借りてくるというジレンマに陥っています。

 

結局は、通貨安を防ぐことがもっと大切ですが、世界的な不況に明確な手段が見当たらない以上、恐れているデフォルト(債務不履行)の可能性もあります。IMFは他の途上国の救済に余力がなく、仮に韓国がデフォルトに陥っても救済出来ないとしています。

 

そうなると、韓国は独力でデフォルトを回避するか、あるいは、デフォルトするにしても、国営企業や公的インフラの経営権を外国に売ったり、或いは、済州島のような島を売るとか、使用権を与えるなどして、ドルを調達することになるでしょう。

 

しかし、これまでの二度のよく似たケースで、めぼしいものは殆ど残っておらず、文政権が現在、韓国の代表する企業に公的資金をつぎ込むのも、国営化しようとする意図があるのかも知れません。

 

 

■ 韓国の通貨スワップにおもう

韓国は、このように為替スワップである以上、通貨スワップも欲しいのは実情といえます。それで、日本に通貨スワップの必要性をアピールしているのですが、日本政府が応じることはないでしょう。それに、正式に打診をうけた訳でもありません。

だからといって、日本に泣きつきたくはありません。彼らのプライドが許しません。日本側も、国際条約を反故にしている韓国に歩みよることは不可能でしょう。