聖護院 京極のブログ

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レバノン、IMFに支援要請へ

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レバノンIMFに支援要請へ 経済改革を発表

2020年5月1日 / 16:12  ロイター

ベイルート 30日 ロイター] - レバノンのディアブ首相は30日、閣議で承認された経済改革プログラムについて、国際通貨基金IMF)の支援を求めるための交渉に使うとの考えを示した。

 

首相は「IMFの支援を確保できれば、厳しい経済状況を乗り切ることが可能になる。この状況は3年から5年続く可能性がある」と述べた。さらに、どの程度の支援が受けられるかは交渉次第だと説明した。

 

レバノンでは、数十年におよぶ放漫財政や汚職問題などから経済は混乱しており、昨年10月から発生している大規模反政府デモにより社会情勢も不安定になっている。

巨額の債務を抱え、3月には同国として初めてデフォルト(債務不履行)に陥った。政府は外貨準備がほぼ底を突いたとしている。

 

通貨の価値は半分以上下落し、10月から銀行から預金を引き出せない状態が続いている。消費者物価も50%も上昇している。

 

レバノンが支援を確保できるのは唯一IMFだけとみられている。これまでレバノンを支えてきた各国の政府は、同国が経済改革を進めない限り支援を行わない考えを示している。

 

レバノンといえば日本国民は、カルロス・ゴーンルノー・日産アライアンス会長を思い浮かべます。日本から違法に国外に脱出した先がレバノンでしたから。彼が今どうしているかはわかりませんが、逃亡地のレバノンに落ち着いてから、贅沢三昧の生活が時々メディアに紹介されていました。

 

彼の両親はレバノン人で、彼自身はブラジル生まれです。ですので、やっぱり逃亡するとするなら、レバノンかブラジルということになったのでしょう。レバノンにいったん逃れて、そこからブラジルへとの計画を持っていたようですが、レバノンのデフォルトと新型コロナウィルスの世界的流行により、残念せざるを得なくなりました。

 

今日は、ゴーン氏のその後の暮らしぶりについては、他に譲りレバノンについて少し書いてみます。

 

 

■ レバノンの国歴について

レバノンは正式名は、レバノン共和国です。共和制の国です。共和制とは、王や天皇を置かず、国民が選んだ国の代表によって統治される国家体制のことです。共和国の代表は大統領なので、共和国とついていなくともその国に大統領がいれば殆どの国が共和国であると言えます。

 

レバノンは冒頭の地図の赤い囲みのある部分で、北から東にかけてシリアと、南にイスラエルと隣接し、西は地中海に面しています。首都はベイルート古代オリエント文明の地の一つで歴史は古く遺跡もあり観光地となっています。

 

第二次世界大戦でドイツに占領されていました。戦後独立し自由経済の元で、国際リゾート地として発展しましたものの、周辺国の宗教対立の戦場となってしまいました。混乱が収まらないまま、国土は荒廃し、政治も経済も混乱して、収拾のつかないまま、2020年3月7日、3月9日期限の外貨建て国債の支払いが出来ないと宣言し、事実上のデフォルトに陥りました。人口は680万人。

 

 

■ レバノンの産業

レバノンは元々より古代オリエント文明の遺産の観光とオレンジやぶどうの農業及び貿易の中継地として収入源がある国家です。GDPは世界平均値ですので、極端に悪くはないのですが、何しろ周辺国の戦争の舞台と化していて、テロや暴動が耐えません。したがって、観光産業や貿易の中継地としての収入は落ちる一方です。

 

■ IMFの支援

この国の政情や社会が安定しない以上、どこの国も投資をしてくれる筈はありません。平穏な日々が戻らなくては、投資をしても回収の見込みはありません。したがって、国の再建にはIMF国際通貨基金)に頼るしかありません。IMFレバノンが再建プランを提出したとの記事ですが、どのようなものでしょうか?

 

■ IMFの支援のためには、レバノンの平和が必要

IMFの資金は、加盟国からの融資によって成り立っています。その資金をレバノンの再建のために注ぎ込むのですから、回収の見込みがなければなかなか納得しないでしょう。この辺の事情は企業への銀行の貸付と同じです。まず、国内の治安の維持のためには、国連の平和維持軍などを置かないと、難しいでしょう。国連もそれを受けてくれるかは不明です。

 

仮に、それに成功しても、中東の宗教組織がテロを繰り返すことは、想像に難くありません。どこまで治安が良くなるでしょうか?

 

■ IMFの要求は恐らく財政緊縮策

IMFレバノンが作った再建計画を吟味し、その上にIMFのプランを加味したものをレバノンが飲めば、はじめて再建始動となるでしょうが、難航しそうです。IMFレバノンの緊縮財政を要求することから始まるでしょう。一般家計の家計費の切り詰めと同じです。それは、一見正当性がありそうですが、一国家と一般家計とは同類で経済を語ることは出来ません。

 

本来なら、政府が財政拡大策を取り、通貨安を利用して輸出や観光客の増加を図ることが大切ですが、いつの時代でもIMFの経済再生プランはそれがありません。従って、レバノンが内乱や中東の宗派の諍いの場となっていなくとも、経済再生は容易に進まないでしょう。

 

■ 経済協力には担保が必要

デフォルトをしたレバノンは、IMFにお金を借りるとして、どんなモノを抵当として出すでしょうか。貿易の中継地のインフラ設備の経営権、歴史価値のある遺跡のある土地の運営権利、上下水道のインフラ経営権などでしょうが、どれもそれほど価値があると思えるものがありません。

 

さらに、レバノンIMFに出した記事にある「経済改革」とは、結局は政府が財政出動の支出を削り、福祉や国民へのサービスを縮小しながら、国民に窮乏生活を強いるものですから、国民の反感を買うことで、政治も混乱はさらに増しそうです。たった一つの望みがあるとするなら、新コロナウィルスが中東全域に、新たな変化がもたらされることで、平和へ向かうかも知れないということでしょう。

 

それでも、おいそれとは、レバノンの再建は進まないでしょう。富裕層も資産の差し押さえも行われる可能性は相当高い。そうでなくとも、貧富の差に対する国民の怒りは高く、それをなし得ずして、国民に上記のような窮乏策を押し付けることは不可能でしょう。従って、逃亡したゴーン氏もうかうかして居れないということになりそうです。

 

■ 日本の経済支援は?

日本は無償や有償援助を行うでしょうか?今のところないでしょうね。レバノンにゴーン被告が逃避しており、引き渡し条項もないことを盾に、日本の引き渡し協力を拒否しています。これの解消が無い限り日本の国民感情として、経済援助が出来るとは思えません。また、レバノンの平和が生まれない限り、ザルに水を張るようなものです。効果はまるで望めませんから。

 

■ 新コロナウィルスの状況

レバノンの新コロナウィルスに関する情報は「world〇meter]に依るしかありません。日本時間の2020年5月7日、午前6時45分の世界の新コロナウィルス状況のレバノンの項を見ますと、下表のようになっています。この表を見る限り、思いの他罹患者と死者が少ないという気がします。しかし、現状のレバノンの国内情勢は非常に荒廃しており、発表の数値を額面通りには取れない気がします。暴動や略奪が白昼に起きるようでは当然でしょう。

 国名                罹患者総数   前日比   死者総数  前日比

 

発症者が3月中旬から出て、殆ど爆発的な増加がありません。しかし、完全な防疫が出来ていてそうなっているとは到底思えません。国民の多くが検査を受けることがなく、罹患し死亡している可能性もあります。

 

この発表の数値は、どのような人を検査を行った結果なのか明確ではありません。富裕層を対象とした検査結果だけではないでしょうか。一般の国民が適正に検査を受けられているとはとても思えませんから。

 

 

なお、world〇meterのアドレスについては、下記です。

Lebanon Coronavirus: 750 Cases and 25 Deaths - Worldometer