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トランプ大統領が、中国の態度次第では関係を国交断絶をしてもよい、とまで述べたと報道されました。これは、中国に進出している日本企業には悲報です。なぜならこれから、通商の報復合戦が行われることが予想され、巻き添えになると予想されるからです。アメリカは、中国が持つアメリカの国債を無効化するとの最終的な強硬手段も示して、新コロナウィルスの中国の非を認めるよう圧力をかけています。
トランプ氏、中国のコロナ対応に「心底失望」 関係断つ可能性も示唆
[ワシントン 14日 ロイター] - トランプ米大統領は14日、新型コロナウイルスを巡る中国の対応に非常に失望したと述べるとともに、現時点で習近平国家主席との対話は望んでいないとし、中国と関係を断つ可能性も示唆した。
トランプ大統領はFOXビジネス・ネットワークとのインタビューで「中国には非常に失望した。中国は(新型コロナの流行を)なすがままに任せるべきではなかった」と言明。「せっかく素晴らしい通商合意を結んだのに、今はそう感じられない。協定署名のインクが乾かないうちに新型コロナの感染が広がったからだ」とし、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が米中通商合意に暗い影を落としているという認識を示した。(後略)続きは下記のサイトへどうぞ。
■ アメリカの主張
アメリカは、中国が新コロナウィルスのアメリカ蔓延が、適切な時期に適切にアメリカやそのほかの国に、警告の発表を怠ったのが原因としています。それが行われていれば、現在のようなアメリカをはじめとする世界の国々の悲惨な事態は、避けられた筈であるとの主張です。
また、中国はWHOの前事務局長のテドロス氏とも通じていて、中国に有利な発表をさせたとして、怒りを爆発させています。テドロス氏は、結局辞任に追い込まれてしまいました。
公平な目で見れば、アメリカは自身を過信して、警戒を怠ったと言えます。また、中国が、アメリカにいち早く警告するべきだったとも言えます。しかし、双方は新コロナウィルスの前の時期から、通商では、犬猿の仲でしたから、中国がアメリカに警告しなくても良いだろうと考えたかも知れません。ただ、WHOを中国が利用したのは、間違いだったといえます。これに関しては、アメリカの主張は正当性があるでしょう。
現在(5月16日)のアメリカの新コロナウィスルの感染者数は高止まりのまま、横ばいです。毎日、2万人前後の増加で推移していることも、トランプ大統領を苛立たせている一因でもあるでしょう。アメリカが持つ、中国への苛立ちは、強い怒りとなっており、これを鎮めるは、中国が非を認める以外にはないでしょう。
しかし、中国はそれを認める筈はありません。なぜなら、認めれば世界中から非難と倍賞を求められるからです。
では、今後のアメリカと中国との展開はどうなるのでしょうか。おそらく、日本を含めて世界を巻き込んだ政治経済または安保の争いになるでしょう。
■ 政治の舞台が経済に移る
アメリカの中国への非難を中国が受け入れないのなら、経済制裁をトランプ大統領が行うのは、目に見えています。中国の有名な企業への活動の制限などから始めるでしょう。特に、先端の情報・通信産業関連企業から始まるでしょう。
一方、中国は、中国に進出しているアメリカの企業を標的にクレームをつけて、商業活動の規制に乗り出すでしょう。
制裁の応酬はやがて、中国と経済の関係の深いヨーロッパの国々や日本や韓国などのアジア・オセアニアにも及び始めることも覚悟する必要が出てくるでしょう。すでにオーストラリアは、中国から牛肉や天然資源の輸入を大幅に減らす圧力などをかけて、アメリカの同盟国への揺さぶりもかけています。
■ 中国進出の企業にアメリカは許せない
中国には、アメリカの企業も進出しており、断交が本当に出来るかは相当疑わしいですが、強い決意は読み取れます。このまま、穏当に解決するとは思えません。アメリカは、人的被害が大きく、他の損害とは中身が違いますから。
中国に進出している日本企業にアメリカという国が、直接に文句を言える立場にはありません。しかし、中国に進出しているということは、同国の雇用や資材を頼りもしますので、結果として中国の発展に寄与している事になります。それを、中国と断交も辞さないとするアメリカが許容出来るでしょうか?それは、中国も同じでしょう。中国による中国進出の日本企業も、アメリカに同調すれば、同じ仕打ちが待っています。
■ トランプ大統領の日本企業への圧力
トランプ大統領は、新コロナウィルスが今少し押さえ込めれば、中国に必ず報復すると考えられます。それは、公言していますし、国交を断絶も厭わないという態度にも出ています。
日本企業で言えば、例えば、自動車では大手は殆ど進出しており、販売も新コロナウィルスが下火となって来て、自動車の製造・販売が伸びてきています。中国から撤退は今更ながら出来ないでしょう。出来ないとわかっていても、アメリカは、日本企業に圧力をかけるでしょう。
■ どんな方法で圧力をかけるか?
アメリカが公然と中国進出の日本企業に直接圧力をかけることは出来ません。しかし、中国に進出している企業がアメリカに進出している日本企業には、アメリカで圧力を加えることは出来るでしょう。例えば、トヨタやホンダなどの自動車会社です。
例えば、中国での利益部分と同じ程度をアメリカへの投資を求めたり、アメリカへの輸入枠を減らしたり、車に言いがかりをつけて、リコールを出したりと幾らでも方法はあります。
最終的に、アメリカが本気で中国と断交するとは思えませんが、手前位までは行くでしょう。
その時、中国に進出している日本企業はアメリカを取るのか、中国を取るのかを迫られる事になるでしょう。日本企業特有の手法である、両方をうまく取れるとは、思えません。
■ グローバリズムを終える時
グローバルリズムでは、人・モノ・カネが国境を超えて自由に行き交う世界です。この世界が、企業には利益に結びついたかも知れませんが、国民は貧富の差が拡大し、貧しくなる人が大量に出現しました。モノを一番消費する中間層がなくなって、高所得層と低所得層の二分する社会になってしまいました。この傾向は、アメリカ、日本、ヨーロッパの先進国や韓国でも同じです。
つまり、グローバリズムはどの国においても、一般庶民の生活の向上をなし得ないだけでなく、より一層貧困化するだけだったのです。いま、新コロナウィスの全世界の蔓延が、奇しくもグローバリズムの終焉を促しています。
マスクを買うにも、日本国内に需要を満たすだけの生産能力がなく、8割が中国の生産に頼る事態です。国民の健康を守ることさえ出来ていません。それは、アメリカやヨーロッパの先進国でも同じでした。日本という国で何かの家電、日曜品などを買えば、Made in Japanを見つけるのに苦労する程です。
日本政府が日本国内企業振興のために財政出動をしても、国民に現金給付をしても、結局中国で生産するものが消費されるのですから、中国での雇用や資材が使われるだけです。日本の中国生産企業は、儲かるでしょうが国民の雇用は生まれず、企業だけが太るということでしかありません。
今こそ、アメリカが中国との貿易において、グローバリズムから国内回帰をしようとする矢先の新コロナウィルスでの軋轢に乗じて、日本も脱グローバリズムを進める好機です。もちろん、無傷で済むとは思えませんが。
■ 政治の場から安保の場へ
アメリカの新コロナウィルスに目処が経てば、政治から安全保障の問題にまで行く行くは発展していく筈です。日本の尖閣列島に中国の軍事装備船が頻繁に出没が起きています。アメリカは、南シナ海で軍事展開も行うでしょう。南沙諸島の中国の埋め立て、軍事基地化などを認めていないためです。
もしかすると、小規模の衝突があるかも知れません。
■ 中国の国家破綻はあるのか
今の中国の指導部が、アメリカの圧力だけでなく、国内の国民からも圧力を受けています。それは、国民生活が日を増すにつれて悪化しているからです。政権内部の腐敗や失策で国内で暴動が起こり抑えきれなくなるとアメリカからの圧力に、中国という国家が縮んでしまう。経済的に疲弊して、飢餓などが発生するところまで行くでしょう。そうなる前に国家破綻は十分にあります。