聖護院 京極のブログ

天と地の間に新しいことなし(ことわざ)・・・人間の行動は今も昔も変わってはいない

高齢者の高血圧の原因が判明

 

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画像出典:東京大学医科学研究所

 

人は、高齢になるに連れ、高血圧になる事が多い。これはわたしの回りの人たちや父母においてもそうでした。高血圧は太っている人が多いと思われがちですが、やせている人であっても高血圧の人は結構います。わたしの母は、ガリガリに痩せた人でしたが、亡くなる前の高齢時には相当な高血圧でした。

 

わたしの知人の母親は、娘とスーパーマーケットで買い物中に倒れ、大量の吐血と左半身がうっ血して、その場で帰らぬ人となりました。持病の高血圧が原因でした。

 

こういう話を聞くと、恐ろしくなり少なくとも3日程は、高血圧にならないように塩分を控えようと考えもし、実際にそういう行動をとりますが、長くは続きません。高血圧には、自覚症状が出にくいからです。

 

高血圧の原因が塩分の過剰摂取が原因であることは、以前から広く知られていましたが、そのメカニズムについては不明でした。それを決定付けることに成功した、というのが今回の研究の成果です。

 

要するに、高齢者に高血圧が多い理由は、高齢になってもなお、『過剰に塩分摂取』をしていることが原因であると結論付けています。

 

『何だ、それは既に分かって居ることじゃあないか』というわれそうですが、その原因は何故なのかです。

 

この記事の、何年か前に、南米アマゾンの原生林であったかと思いますが、塩を食材に添加しない原住民がいて、高血圧とは無縁であるとの記事をネットで見たことがあります。

 

塩分は勿論どんな人種の人であってもなくてはならないものですが、この原住民は日々の生活の食材そのものからだけ取り、食べ物に添加物として塩を利用しない人たちでした。この人たちは、歳をとっても高血圧がないと説明されていました。

 

 

 

今回、東大先端研究センタ―の研究発表によれば、以下の発表になります。

高齢者高血圧の発症機序を解明 ~食塩の関与~

発表のポイント:

  • 何故高齢者では高血圧になりやすいかの原因は不明でしたが、高齢者で血圧が上昇する機序を解明し、新たな治療法を提示しました。
  • 加齢に伴い血中Klotho(クロトー)蛋白が減少すると、食塩摂取時に血管の収縮経路が活性化し、腎血流量が低下し、その結果血圧が上昇する一連の機序を解明しました。
  • 血中Klothoの測定は高齢者高血圧の発症予知の有用なマーカーとなる可能性があります。また、高齢者特有の病態に合わせた高血圧の予防と治療法の確立が期待されます。

 

高血圧は我が国で4300万人の方が罹患していると推定され、国民の3人に1人が抱えている国民病です。高血圧に起因する死亡率は年間約10万人で、心血管病や脳卒中といった命に関わる重篤な疾患の原因となりますが、自覚症状がないために、その約半数の方が未治療のままです。

高血圧は加齢と共に増加することが知られており、40~70歳の高血圧有病率は、男性で60%、女性では40%、75歳以上では、男女共に70%以上となります。高齢者高血圧は治療に難渋することが多く、また有効な予防法や有用な予知マーカーは有りませんでした。

疫学調査から、食塩をほぼ摂取しない文化(ヤノマモインディアン)では加齢に伴う高血圧発症が認められないことや、加齢と共に食塩摂取時の血圧の上がりやすさ(血圧の食塩感受性)が増加することが分かっていました。しかし、なぜ加齢と共に高血圧罹患率が増加するのか、また食年感受性が高くなるのか不明でした。

 

研究成果のまとめ

歳をとると高血圧になるメカニズムが解明されました。

 

高血圧の原因にKlotho(クロト―)がかかわっているとしました。Klotho(クロト―)は抗加齢因子という人の体を老化を抑制する遺伝子です。歳をとるとこの遺伝子を持った蛋白が、血中より減少していきます。

 

高齢でKlotho(クロト―)が低下しているマウスに若いマウスと同量の塩分の食物を与えると、高齢マウスでは血圧の上昇につながる事が確かめられました。

 

そこで、このKlotho(クロト―)蛋白を補充すると血圧上昇が抑えられました。従って、高血圧の治療にKlotho(クロト―)蛋白の補充と血管収縮経路の阻害薬(Wnt阻害薬)の併用で投与を行なうことで、高血圧の治療に有効であることが判りました。高血圧の予防として、Klotho(クロト―)の量をマーカーとすることで、可能になるとのことです。

 

 

 

研究では、普段の生活で塩分を極力ひかえること。特に加齢に従って、その量には注意が必要であると力説しています。

 

 若い頃の食べ物の嗜好は、歳をとってもそう変わらない、変えられないと思います。若い頃から、塩分控えめの生活を心がけた方が、結局健康でいられますね。

 

用語解説

Klotho(クロトー)
Klotho遺伝子は老化抑制遺伝子で、Klothoを完全に欠損したマウスは急速に老化が進行し、短い寿命を呈することから、Klothoは体の様々な老化現象に関与すると考えられている。Klotho過剰発現マウスでは平均寿命の延長が報告されている。Klothoは主に腎臓で発現し、カルシウムやリンの調節に関わる他、血中に放出されて、遠くの臓器にホルモンとして作用する。