聖護院 京極のブログ

天と地の間に新しいことなし(ことわざ)・・・人間の行動は今も昔も変わってはいない

10分で自己修復できる塗料(阪大)

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図1 本研究で開発した強靭で自己修復性を有するリサイクル可能な超分子材料
(a)自己修復やリサイクルを可能とする分子間相互作用の様子。(b)超分子材料のコーティングに傷を入れてもすぐ元通りに戻る。(c)破壊された超分子材料を遊星型ボールミルで再成型して元の状態に戻すことができる。

 

画像出典:大阪大学

大阪大学の研究チームが、塗装されたものの表面に傷がついても、すぐに自然に修復できる、非常に強靭な材料を開発した、という研究発表を取り上げてみました。その記事は、下の方にあります。表題の一部に「あっという間」との記述がありますが、レトリックかなと思います。浅い摺り傷であれば、みるみる内に位でも言い過ぎの感はあるのかも知れません。

 

 

■ 大手自動車メーカーも開発済み使用済み

日産自動車トヨタ自動車、ドイツのBMWなどの大手の自動車会社でも、車の表面についた傷を自己修復してくれる塗料を開発し、実際に高級車を中心に塗装しています。それらは、各社ともそれぞれ多少イメージが違いますが、大差はありません。

 

この中で、世界で最初に自己修復塗料車を出したのは日産自動車でした。

 

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日産自動車の呼称:スクラッチシールド

画像出典:日産自動車

引っ掻き傷や擦り傷で浅めのものなら、時間が経てば自然と修復できるという点でも各社は共通しています。しかし、カーコーティングしたり、汚れが付いたままであったり、ワックス掛けをしたりすると、その機能が損なわれがちになるなど、修復に至る期間が長いのが欠点とも言えます。

 

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トヨタ自動車呼称:セルフストアリングコート

画像出典:トヨタ自動車


■ すべての傷を自己修復してくれるわけではない

これまでの塗料から一変した画期的な塗料というほどではありません。ちょっとした機能が追加されたくらいの話です。また、メーカーのどの塗料がより優れているのかと、比較するほどのこともありません。「どんぐりの背比べ」程度のことです。

 

従って、大きめの傷は修復で来ませんし、小さな傷も深いものは完全には戻りません。見た目には完全に戻っているようでも、傷は残っています。

 

ただ、金属ブラシで軽く引っ掻いた場合や洗車時の小傷は、加熱すれば20分程度までには修復できるようです。

 

 

 

大阪大学の研究では、自動車のボディーなどの金属面への塗装は想定外の様で、再生可能なプラスチックへの応用が主のようで期待大ですね。

あっという間に傷が回復

http://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2020/20200826_2

強靭でリサイクル可能な自己修復性超分子材料

研究成果のポイント

  • 二種類の高分子を混合することで、傷を自然に修復できる非常に強靭な材料を創製。
  • 一般的な混合装置「遊星型ボールミル」で実現。
  • 分子設計と混合法によって、これまでにない迅速な自己修復を実現。
  • 材料を再度混合することで、リサイクルが容易に可能に。高分子材料が長寿命化し、低環境負荷に貢献。

研究の背景

高分子材料(ポリマー材料)は軽くて柔らかく製造も比較的簡単で、その発見以来、我々の生活に欠かせない材料です。しかし、近年、廃棄プラスチックによる環境汚染や原料となる資源の枯渇などの問題に直面しており、高分子材料の強靭化・長寿命化がこの数十年特に求められています。

 

分子の間の力を利用した超分子材料は、強靭な材料であるだけでなく、材料がダメージを受けても自然に治る性質をもっており、上記の課題の解決に有望な材料です。この材料を機能強化し、さらに、製造過程を簡便にすれば、実用化へのハードルは下がります。

 

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修復前と後の画像です

画像出典:大阪大学

 

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広範な用途

画像出典:大阪大学

 

 

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修復前と後の画像です

画像出典:大阪大学

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広範な用途

画像出典:大阪大学