聖護院 京極のブログ

天と地の間に新しいことなし(ことわざ)・・・人間の行動は今も昔も変わってはいない

ペットの兎を飼っていた

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少し歳をとると、むかしのことが折に触れて、思い出されて来るようになるものですね。

 

本日は、知り合いがペットとして飼っている兎が重篤になったと、悲し気なメールを送って来ました。彼女が兎を飼っていたことは、以前から聞き知っておりました。二人の会話の話題にちょっと困ることがあると、わたしはその二羽の兎の暮らしぶりを尋ねたりしたものです。

 

すると、彼女は、急に饒舌になり、殆ど間断なく話し出すことで、次の話題を探すのに一息がつけたものでした。

 

写真も送ってくれました。白と白黒の斑(ぶち)の番(つがい)だったというところまでは、覚えていますが、名前まではちょっと。その兎が重篤らしいのですが、原因は不明だそうです。ペットは、家族と同様といいます。彼女の心痛は相当です。どのように声をかけたらいいのか?

 

 

■ 兎を飼うことになった

その話で思い出すことがあります。

わたしの子供の頃ことです。多分ですが小学生の中学年位だったと記憶しています。ある日のこと、弟がダンボール箱に二羽の小さな兎をどこからか貰って来ました。その兎を我が家で飼うというのです。

 

『絶対に、ちゃんと世話をするから』

この言葉は、子供の生き物を飼ってもらいたい時の常套句ですよね。そう主張して、涙をもってして撤回しません。

 

『ちゃんと世話をするから、ええやろ。なあ、お父ちゃん、お母ちゃん』

と交互に同意を求めます。母親は、絶対に世話をしなくなると分かっていますから、反対しました。父も同じように「絶対反対」をするとわたしは思っていたのですが、豈図(あにはか)らんや許可を出したのです。

 

もしかしたら、当時、貧乏の極みの我が家であって見れば、

『大きくなったら、食料に出来るかもな』

 

と考えたのでしょうか。いやいやまさか。今となっては確かめようもありませんが。ともかく、承諾してわたしにも手伝ってやれと、まさかのわたしにも類が及ぶこととなりました。

 

 

■ 甲斐甲斐しく世話をする

弟は、毎日学校が引けると一目散に帰ってきてなかなか甲斐甲斐しく世話をしました。貰って来たのが春4月の下旬頃のことで、食料の草を刈って来ては、嬉しそうに与えていました。小さな山間(やまあい)小さな村でしたので、兎の餌となる草や野菜に困ることはありません。

 

兎は、水は殆ど飲まないのですが、どうしたわけか、おしっこは法外にたくさんします。おしっこが多いので、したがって、こまめに床を新しいものに交換してやらないと、匂いは強くなりますし、体も薄汚れます。ウンチは、黒豆大と控えめ。

 

 

■ 一か月過ぎ

一か月過ぎになると、弟は世話をするのも面倒がるようになりました。その穴埋めをわたしがすることも多くなってきました。しかし、わたしは好きで買い始めた本人ではありませんから、不満から、当初の約束を守れと迫ります。

 

「後悔先に立たず」、弟は

『誰か貰ってくれないかな?』とこぼすことも多くなりました。

 

 

■ 冬到来

そういうことがあっても、何とかその年明け過ぎまでは世話を続けてきました。兎にはわたしも愛着が出てきてむしろ積極的に世話をするようになり、弟はわたしの作業を手伝うという、逆転した立場になっていました。

 

冬が来て、餌となる緑の葉が取れず、もっぱら自家用の大根や人参を与えていました。とても人懐っこく、掃除のときに出しても、どこかに行くこともなく、辺りを跳ね回っているだけで、逃げようとしません。狭い檻に入っていて、脚力がなかったせいかもしれませんが。

 

 

■ 凍死

凍えるあくる年の2月初旬に、朝、兎を見に行きますと、2羽とも息絶えていました。

『なんで?』

おそらくは、凍死だったのでしょう。

理由はわかりません。体は硬直しており、すでに死んでから時間が経っていることを思わせました。

不思議に涙は出ませんでした。

遅れて出てきた弟もわたしの顔色を窺うようにして

『なんで?』

 

 そのあと、どこかに埋葬したと思うのですが、まるで記憶がありません。ただ、今でもあのウサギには、申し訳ない気がしています。もっと、ちゃんとした飼い主なら、更に長く生きられたろうにと思うのです。例え、死ぬことがあっても、凍死なんかでは無かったろうにと。

 

あの時から、わたしの家もわたしが、家元を離れてから今日まで、ペットを飼ったことがないのは、その無残にも凍死した兎が思い浮かぶと、ちゃんと世話をしてやれるのか自信がないのです。

 

 

■ 一方、弟は

弟は、今でも兎ではなく犬を数匹飼っています。兎のことは思い出さないのでしょうかね。兎が死んだのは、彼が小学生低学年でしたので、記憶が殆ど残っていないのかも知れません。

 

こんなわたしが言うのもなんですが、ペットは、飼い主に命を預けています。大事にしてあげてくださいね。