昨年末、今は家屋の存在しない故郷の菩提寺に年末の挨拶に出掛けたのは、十二月の暮れ近く。住職と互いに近況などを交わす裡に、話は村の様子などにも及びました。
『村に何か変わりはありませんか』
と聞くと
『うーん。まあ、若い人がおらん。この村も廃る一方やな。変わったことといえば』
と言って、大きな目を更に大きく見開いて、殆ど毛の抜け落ちた頭を、くるりと撫でまわしました。
『火事があってな』
『え、火事ですか?』
わたしの家も父が失火して、全焼したのをはっとして思い出しました。
『うーん。エライこっちゃった』
というものの、その詳細をいかにも勿体ぶった風で、直ぐには話さない。もしかすると、個人的な話をすることに躊躇したのかも知れません。
■ 蜂の駆除
その後の住職の話により火事の原因は、すずめ蜂の駆除依頼で来ていた業者が、煙で蜂を燻そうと焚いた火が家に燃え移って、全焼してしまったという。
『え、全焼、、、』
『うん。誰も怪我はせんし、類焼もなかった。ただ、住む家がなくなったんよ』
『じゃあ、どうなるのですか?』
『駆除業者に今、建てて貰ってる』
『蜂は確かに駆除出来たでしょうけど、、、』
そのあとは、話も弾まず、奥方にも挨拶をして退いた。業者は、エライ損をしたのかな、と気の毒になりもしました。
■ スズメバチ駆除業者の年収
このスズメハチ駆除業者(スズメバチに限りません)が、火災保険に入っていたかは、知る由もありません。けれども、業者の年収は2,000万円が相場だとか。失火させた業者は、建て替え費用は痛手であったでしょう。が、見たところ建て替えた家は600万円程度で済みそうな平屋建て。刺されるよりはましだったかも知れませんね。
読者の中には、主に初夏から初秋までだけ働いて、2,000万円なら悪くはないと思う方もいると思います。夏の暑さに対する体力が必要でリスクの多い商売ではあるが、転職して段取り良くやれば、いいかもとは思います。
■ 蜂駆除
わたしが高校生の頃には存在した実家にもスズメバチが巣を作った事がありました。その場所が玄関の屋根の上であり、何とかしようと弟と共に、夕暮れから駆除を始めました。
わたしは、バイク用のフルフェイスのヘルメットと上下も気重ねし、長靴を履き、弟は水中眼鏡と防空頭巾という出で立ち。わたしの手には、バイク用の防寒手袋と細めのしなる竹を持ち、梯子から、出入口らしいところから竹を差し込み、当てずっぽうに盛んに突きます。
すぐさま、怒り狂ったスズメバチが次々と現れ出でて、身の周りを飛び回る。汗だくのわたしは、目に汗が入りよく見えません。めまいすら感じて、続行不能に至りました。降りる途中の梯子から後ろ向きに転落してしまいました。
弟はと言うと、すでに遠くに避難し、
『おーい。大丈夫かあ』
というだけで、闇夜に紛れて姿が見えません。
結局駆除は叶わず、事態は悪化する結果となりました。出入りは裏口からとなり、夏中に不便でしたが、秋に入るとハチ達の姿は見えなくなり、冬場に出入り口を、土壁材料で塞いで完了となりました。
最近のネット動画で見る最近のスズメバチより、余程狂暴ではなかったのだろうと思います。