質素というか、みすぼらしい服装をして、ぼろ家に住んでいる人は貧乏人でしょうか。高級車を持っていて乗り回している、かっこいい人は裕福そうな生活者でしょうか。
外見からいえば、一般的にはその通りでしょう。しかし、そうとも限らないことも往々にしてあります。
■ 新入社員
わたしがいた不動産会社に新人が入ってきました。彼は、学卒で入った訳ではなく、一般的に言えば転職者で、当社としては新人であっただけではありますが。
当社は、殆どがそのような転職者で占められていましたから、彼が入社して来たからといって、何の注目度も上がりませんでした。ごく普通の若者に過ぎませんでしたから。
彼の仕事は、わたしと同じ飛び込み営業で不動産物件の売り込みにありました。
わたしのいるチームではありませんでしたが、チームリーダー同士が比較的仲が良いチームの配属に決定しました。わたしと同年齢で、気にはかけていました。
■ 未経験
彼は、この不動産業界は未経験、わたしと同様に上司である主任や係長の命じられるままに、行動するしかありませんでした。
ある日、
朝礼で、部長の口から彼の名が出て、一躍有名になりました。部には50人を超える飛び込み営業員がいましたが、同チームの人間以外に誰も彼の名を知りません。
『だれだ?』
と、互いに首を振るばかりであったのです。彼は入社して1週間もたっていません。
■ 新人高額物件を売る
飛び込み営業に参加した彼は、
実は、いきなり高額物件を売って名を上げたのです。
『え、何であんな新人が?』
と誰もが思いました。彼はチームの一員として、同じ地域を回っていて、先輩たちが午前中に回った後、午後にもう一度回った時に彼は成果を上げた。
午前中に回った先輩たちも、これには驚きました。朝礼中に名を呼ばれて前に出た彼の行動を、部長は、
『お前たちが、散々セールスをした同じエリア、彼は回った。真面目に一軒ずつな。彼は、係長が回れと言ったエリアの中の、ボロボロの家にもセールスに行った。そしたらそこが、今回の販売物件の最高額の家を買ったんだ。しかもキャシュ買いだぞ』
『え、あの家はさすがに回らなかったな。』
以前同じエリアを回ったことがあるわたしは思い返していました。
部長は、続けて
『お前たちは、一体どういうセールスをしているんだ。エリアを回る時には、すべての家をまわっていないのか!』
これには、誰も反論できません。
■ 新人曰く
新人の証言では、そのボロボロの家にはこれまで、
『誰もわが社のセールスは来なかった。あんたが初めてやった』
といったと言うことでした。なんという事でしょう。
わたしを含めて、多くの同僚が
『あんな、ボロ家に住んでいるのだら、カネがなくて住み替えることは出来ないだろう』
と考えて、誰もセールスに行かなかったのです。
つまり、「人は見かけによらない」というお手本のような話であったのでした。セールスにおいては、相手に対する先入観は、邪魔者の何物でもありません。誠実に、ダメ元で当たってみることが大切ですね。
■ 近くにもいるお金持ち
わたしたちの周りにも、こうした質素な生活を送っている人の中にも実は、大きなお金を持っている人がいる。高級な車を乗り回している人は意外にお金に窮屈な思いをしていることも、実は見た目には分からないものです。