郊外のどこかの大きなあるショッピングモールには、家族を載せて時々出かけます。しかし、わたしが主導して行くわけではありません。妻と娘の威圧的要望を受け入れて出かけるのです。そうでないと機嫌が一日悪いから。
二人は、駐車場に着くとサッサと店内に消える。余程のことがなければ、わたしが金魚のフンのように付いて回らないことを知っているからでしょうか。
■ 運転手
わたしがショッピングモールに行くのは、運転手としての役目があるからで、特別にほかに良いことがある訳ではないのです。わたしも、一呼吸おいてから行く当ても、見たいものもない大きな店内をまるで難民か迷子のように歩きます。
3階から1階まで一通り見て歩いては見るけれど、殆ど立ち止まることがありません。
■ 店舗
圧倒的に多い女性のファッション関係の店舗があきれる位。
「あんなにたくさんの店があって、儲けがでるのかな?」
などと、大きなお世話ながら心配したりします。
前からくる人の波にぶつからないようにするのに疲れながら一通り見て回ると、車に戻って昼寝をするのが一般的です。昼寝をしない時には、知っている歌を片端から歌ったりして、声が枯れてしまうことも。
■ 見る店
うたた寝から目が覚めても二人は帰ってきそうにもないので、また、店内に入る、トイレにも行く、他には本屋か100円均一のショップ、文房具売り場を覗きます。一通り見るけれども、たとえ、
「これ、買ってみようかな」
と思うことがあってもレジが混んでいたらもう嫌になって、持っていたものをあったところに戻して出てしまことも多いのは、昔からすこしも変わっていません。
今すぐに必要だからというのでなければ、並んでまで買いたいものは殆どないのです。仕方なくまた、車に戻ることになるのですが、戻る途中に店内のかしこにあるソファーや小さなベンチには、わたしと似たような当てのない男性が、所在無げに腰かけているのを見かけると、
「あの人たちも、買い物難民かいな」
と、思うと共感と同情心が少しだけ湧いてきます。
■ 買い物
何をそれ程見なければ気が済まないのかは、分からないけれども、妻と娘は車を降りてから、消息不明のままに、いたずらに時間は3-5時間が経つ。
『そろそろ帰りたいな』
と思う頃に、不思議に意を察してか二人は戻ってきます。わたしの許容時間を過去の経験から体得している気まします。そして、
『お父さんの好きな、お菓子と造りをかっておいたよ』
と、愚痴を言う前に先制されて、
『ほな、帰ろか』
となり、道中で二人は、うたた寝の船をこぐ。