「男はタフでなければ生きていけない、やさしくなかったら生きている資格がない」
まあ、キザの極みのような有名な言葉ですね。
英語フレーズは
If I wasn't hard, I wouldn't be alive.
If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.
です。ほぼ訳は外れてはいません。
レイモンド チャドラー(アメリカの小説家であり脚本家)の作品「プレイバック」の中のマーロウという長身の探偵のセリフです。チャドラーの小説といえば、「さらば、愛しき人よ」なども有名です。名日本語訳ですね。この題名だけでも読んで見たくなるというものです。
■ 「プレイバック」
プレイバックの小説の中で、
『あなたのようなシビアな男性が、どうしてそんなに優しいの?』(多分こんなふう)
と美女(と思しき女性)が言うと、冒頭のキザ極まりないセリフを、マーロウがのたまうという訳です。この作品は1958年で、日本では戦後5年程度とまだ社会が不安定な頃でありました。
■ 古き良きアメリカ
「さらば、愛しき人よ」とか「プレイバック」の作品の背景には古き良きアメリカの面影が色濃くて何故かなつかしささえ思い浮かべてしまいます。それは、わたしの過ごして来た、古き昭和の時代を懐かしむ気持ちに似ています。
今のアメリカの映画のように、地球や全世界をアメリカ人の僅か数人のヒーローが救うなどと言うようなうぬぼれたものではなく、もっとロマンチックな世界が描かれていて、
『このストリー、ええやおへんか』
と思わず京都弁で言いたくなるのであります。こういう映画が世界中で殆ど見なくなってきましたね。そういう映画は今の時代では、
「辛気臭(しんきくさ)い」
のでありましょうか。わたしは途轍もなく素晴らしいと思わずにはいられないのですが。
■ 男は○〇でなければ、○〇でない、、、
男はタフでなければ、生きていけない。優しくなければ生きてる資格がない」を言い換える言葉遊びもありました。例えば、
「男は希望がなければ生きていけない。夢ががなければ生きて行く資格がない」
とか
「俺は車がなければ、仕事にいけない。免許がなければ運転する資格がない」
などと無理筋のものやら、分からないような言い換え言葉も作ったりしましたが、チャドラーの言葉を超えるものは出来ませんでしたし、聞いたこともありません。