聖護院 京極のブログ

天と地の間に新しいことなし(ことわざ)・・・人間の行動は今も昔も変わってはいない

信長と森蘭丸、その間柄

 

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画像出典:安田 靫彦

 


織田信長の身の回りを世話をする小姓の一人に森蘭丸という人がいたことは、信長との関係において特殊であったという意味を付けられて、現在ではつとに有名です。

 

その特殊性のある関係の是非については、判然としません。決定的な証拠がある訳もありません。ただ、信長のつとにお気に入りの小姓であったことは間違いなさそうです。森蘭丸のずば抜けた才能に信長が惚れ込んでいたのでしょうね。

 

それを如実に伝える逸話があります。後年に、森蘭丸の才覚に後からつけられた逸話の可能性が高いのですが。時に森蘭丸は17歳前後でありました。

 

■ 信長と小姓のエピソード

ある時、織田信長は特に用もないのに小姓を呼びつけました。

 

信長『誰かある?』

「ある」とはいまでいう「いるか?」にあたります。

一人目の小姓『は、何か御用でございましょうか』

呼ばれて神妙にしている小姓に、

信長『いや、もう下がってよい』

一人目の小姓『はは』

小姓は怪訝ではあるものの下がります。

すると暫くして、信長がまたしても呼びます。

信長『誰かある?』

二人目の小姓『はは』

小姓は、参上して信長が何か言い出すのを待ちますが、信長は不機嫌に

信長『もう下がってよい!』

というのみです。一体何が信長の機嫌を損ねたか、うろたえながら小姓は下がります。しかし、信長は更に

信長『誰かある』

と呼びます。ここで、始めて森蘭丸が参上します。そして、床の上に落ちている小さなゴミを、拾い手中に納めますと

森蘭丸『殿、何か御用でございましょうか?』

信長の機嫌は一挙に回復して、

信長『下がってよい。それを拾わせたかったのだ』

というものです。

 

信長のような、短気ではあるが才気溢れる武将には、森蘭丸のような優れた気配りが出来る人間を愛さずにはいられなかったでしょうね。この逸話は、恐らく作られたものであったでしょうが、それ位の気配りが森蘭丸という人にふさわしいものであったのでありましょう。

 

■ 信長の小姓

信長の小姓には、3人がいたとされています。そのうちの一人が森蘭丸であったのです。小姓は先に書いたように、武将に使え身の回りの雑用を行う武士の事です。今では、そのような人は存在しませんが、非常に大雑把に表現するなら会社の社長の秘書と似ています。

 

森蘭丸は、信長の考えや行動、性格をちゃんと常々に観察し心得えいて、その行いにいつも対応できるだけの用意が出来ている人でした。信長が突然に何かに思いついたような突発的な発言や行動を、いわばお見通しでいる程の才覚がありました。

 

それが、信長には気に入っていたのです。

いわば「肝胆相照らす」仲であったのでしょう。それ故、信長との特別な関係を邪推されたのかも知れませんが、わたしはそうは思いません。

二人の仲には愛情は他の誰よりも強かったかも知れませんが、それは「プラトニックラブ(肉体を離れた精神的な愛)」であったでありましょう。

 

もし、信長と蘭丸とがプラトニックラブでの間でなかったら、恐らく早期に二人は堕落した仲に落ちた事でしょう。しかし、そうはならず、本能寺の変で信長と殉死して、その名は更に不動のものとなりました。

 

この逸話は、現在の社会の中に有っても十分に役立ち通用するところがあるでしょう。