いつの頃からか、眉毛に白いものが混じるようになり、次第にその度合いは増してきました。それと同時に、どうしても自身が「年寄臭(くさ)い」と思えて腹立たしくなり対策を熟考して染めることを決意しました。女性は眉を描くということも出来ますが、男性はする人がいない訳ではありませんが、一般人は殆どしないでしょうね。
妻や子は、
『別に白い眉でもええのんちゃうかー』
とか
『白眉(はくび)とか言うて、吉相なんやでーー』
などと他人事に気にも留めません。そりゃあ、物凄く立派な人格者や地位のある人ならともかくもわたしは、そこら中にいる一介の老人に見られるぼけ老人予備群の一人です。眉が白くても取り得は無く、敬われることもなければ、お金もちでもない訳です。
スズキ自動車の先代の社長の様に眉毛がそう白(はく)に仮になっても、良いことは何一つ得なものはないのであります。
■ 染める
従ってわたしは、染めることと決めました。その決心を妻に告げると、
『クレヨンしんちゃんのおじいちゃんみたいに、頭はつるつる(何を失礼な!)なのに、眉毛は真っ黒になるなんて誰が見てもおかしいやろが?』
『誰が見てもおかしいって。ええやん。あかんか?ー』
その場はそのままでしたが、スーパーに出かけた折に、毛染めを買いました。眉毛専用のものはありません。勿論、毛髪用です。眉の専用も有ってもいいと思うのですが、無いのは需要が殆どあり得ないからでしょうか。
買ったのは、毛染めと言っても毛に深く浸透して中のたんぱく質に結合して黒く染まるという「あれ」ではありません。
■ 買ったのは
買ったのは、頭髪に白髪が混じっているいわゆる「ロマンスグレー」の人が、白髪を目立たなくするための黒いリンスのような製品です。これは、染めるというより何回か継続して使用する内に白髪に黒い染料がこびり付くというのがふさわしいのでしょう。
従って、ごく普通のシャンプーでは、実にあっさり落ちてしまって、元通りの白髪が目立頭となるのです。
■ 眉に塗る
風呂に入った時に、それを眉に塗布する訳であります。薬指に少量を絞り少し揉みを加えながら全体に満遍なく摺りこみます。両方の眉を塗り終わった時には、まるで野球漫画の主人公のような、想像を絶する「太眉」が仕上がる。
『星君!』
『やあ、花形満君か!』
てなことを言いながら我ながら実に滑稽な顔の映る鏡の前で、毎度ながら吹き出しそうになる。この格好で浴槽で倒れて死んだら、一体どのような検分がなされるでありましょうか。
『死因は心臓麻痺。しかし、眉がこのように黒塗りにされているのは、謎である』
なんてことになるでしょうか。
ああ、やだヤダ。
と思いながら、塗ってから必要最低時間の5分最低待ちギリギリで洗い落とす。
そのあとを見てみると、あんまり変わらないけどなあ。