聖護院 京極のブログ

天と地の間に新しいことなし(ことわざ)・・・人間の行動は今も昔も変わってはいない

介護を見放された人

 

画像出典:みんなの介護


わたしが高校生の頃、わたしの住む京都の片田舎の話。それは、話好きの母が近所の人達から仕入れて来た話であった。

 

村は50戸に満たなかったろう。

 

その村のある家に住む老人が介護が必要となった。

老人の介護の度合いが、重くなってからは、他の家族の介護も殆どしなくなり、独房のように離れに老人を移してしまった。着替えや風呂はおろか、汚物の処理もしないままに放置していた。老人には息子夫婦が同居していたし、子供もあったのに。

食事だけは、手の届く場所において餓死は無かった。

 

そして、床は腐り半分落ちかけた頃に、老人は亡くなった。

 

家族の名を毎日の様に呼んでいたという話もあった。話には尾ひれがついているのかもしれなかった。しかし、人としての尊厳を踏みにじられた惨状に高校生であったわたしでも深く同情したものだ。その頃は今のように老人が外部の組織や人から支えられる制度は全くなかったから、陰口に批判はするが誰もそれ以上の事は出来なかった。

 

老人の人生は何だったのか。どんなにか無念であったことだろう。

母は、話し終えた後で、わたしの顔をマジマジと見つめて、

『気の毒に、、、』

と言った。母の視線がわたしには辛かった。