イランの国旗と地理
画像出典:Wikipedia
イランとアメリカは、新コロナウィルスの蔓延で、国が悲惨な状況にあっても、相変わらず非難の応酬を行っています。アメリカにはアメリカの、イランにはイランの主張があって、その是非をわたしたちは判りづらいものです。
『へえ、アメリカもよくやるねえ。もう止めといたらええのんと違う?』
と、減らず口のトランプ氏に、感心したり呆れたりです。
一方のイランのロウハニ大統領も口では負けてはおらず、アメリカに相変わらずの憎まれ口を叩いておりますが、両者とも面を切ってガチンコの勝負はやりたくはありません。
トランプ大統領には大統領選が、ロウハニ大統領には国内の若者を中心に、戦争への嫌悪感が増えてきており、反政府運動が拡大する懸念や新型コロナウィルスによく感染拡大を阻止出来ていないことから、表立った行動はできません。互いに相手を非難するのは、むしろ国内向けのアピールであろうかと思います。
アメリカは、大統領選もあり、派兵もドローンによる攻撃も今は行うことはできません。しかし、イランの核開発には警戒を強めており、いよいよ、イランが核でアメリカを威嚇するようになれば、敢然として施設の殲滅(せんめつ)に近い攻撃を加えるでしょう。
それを牽制するために、イラン国防省など同国の核兵器プログラムに関与する個人や団体を制裁対象に指定して、金の流れを遮断しようとしています。これは、なかなか即効性のある手段ではありません。気長な兵糧攻めといえるでしょう。
しかし、兵糧攻めでも、抜け穴がいくつもあって、その穴をどのように塞いでいけるかは不透明です。しかし、最後に記載しているように経済は暴動が起きてもよいレベルに悪化しています。
■ イランは中東の中国化に走る
イランは石油も産出しますし、核開発もしており今でも強気です。これまでからのアメリカの経済制裁で国内経済は疲弊はしていますが、音をあげません。国民は、アメリカとの和平を望む声が若い人に多く、アメリカとの軍事交戦が起こることを望んではいません。
① イラクに侵攻
しかし、イランはヒズボラというイスラム原理主義であり、テロ組織を使って隣のイラクを攻略しつつあり、アメリカは駐留先のイラクからまもなく撤退します。イラクの中にもすでに、ヒズボラ組織が潜入しいて、駐アメリカ軍近くに着弾した時にも、アメリカ軍の動きの情報を流していたといわれています。
「ヒズボラはレバノンのシーア派系イスラム原理主義政党。「神の党」の意味。法学者フセイン・ファドラッラー師が精神的指導者といわれる。 1982年のイスラエルによるレバノン侵攻後にイランの援助を得て発足し,シリアからも支援を受けている。 92年の総選挙に政党として初参加。」(出典:ブルタニカ国際百科事典)
②レバノンに侵攻
また、レバンの政治の混乱も続いており、デフォルト以降、一度も政権が樹立されたことがなく、つい先ごろにも首班指名された政治家が辞退するという状況です。それにもヒズボラが関与しているともいわれています。
弱り目の国入っては軍事的に威嚇と懐柔もって支配しようとしているところは中国に似ています。同盟国であることからも知れます。
■ イランの最大の敵は新型コロナウィルス
イランの最大の敵は、アメリカではなく、新型コロナウィルスです。2020年9月29日におけるイランの感染者の総数は約50万人超、死者数は2.5万人超です。
このウィルスは、アメリカより何十倍も厄介です。たとえ、アメリカと戦闘を行ったとしても、負傷者のたとえで感染者、戦闘死者のたとえで感染死者とすれば、このような数字に至ることはまずありえませんから。
2020年9月末現在のイランにおける新コロナウィルスの罹患及び死者の状況は、下のグラフに示すとおりです。口頭では説明しにくい、癖のあるグラフとなっています。
9月に入ってから、日毎の感染者は日を追って増加しています。23日には一日の感染者数が3,400を超え、過去最悪の数字となっています。その後は少し落ち着いて見えますが、そう簡単に収束するとは思えません。
検査薬や治療約もアメリカの経済制裁で十分に手に入っておらず、日々の発表が正確かどうかも明確ではありません。
2020年9月29日(火)におけるイランの罹患者の推移
画像出典:worldometer kは千人単位
次は、死者数の推移です。増加傾向です。新規感染者が増加しているのですから、当然増えてきます。
2020年9月29日(火)におけるイランの死者の推移
画像出典:worldometer
こうして新型コロナウィルスがさらに蔓延して、拡大や高止まりが続けば、国民の不満は政権にも向けられれるようになる可能性はあるでしょう。しかし、ウィルスは軍事力では解決できず、医学でしかありません。
8,200万人もの国民がいる国を、アメリカの制裁下で統制していくには、結局のところ圧政を強化するしかありません。その時、もしかしたら、国民が蜂起するかもしれません。そうなって、イランが新しい平和国家に転換してほしいものです。
■ イランという国の予備知識
イランという国について、どれくらい日本人は知っているでしょうか?政治体制は共和国。共和国には大抵の場合、大統領がいます。共和国とは君主のいない政治体制の国です。イランの場合最高指導者としてハメネイ師は君主に近いものといえますが。
なお、下記出典は外務省のホームページの抜粋に拠りました。
基礎データー
- 国名 イラン・イスラム共和国
- 面積 1,648,195平方キロメートル(日本の約4.4倍)
- 人口 8,280万人(2019年、世界人口白書2019)
- 首都 テヘラン
- 民族 ペルシャ人(他にアゼリ系トルコ人、クルド人、アラブ人等)
- 言語 ペルシャ語、トルコ語、クルド語等
- 宗教 イスラム教(主にシーア派)、他にキリスト教、ユダヤ教等
- 議会 一院制
経済 (GDPに関するデーターは2020年、IMF推計。イラン市場レートで計算)
- 主要産業 石油関連産業
- GDP(名目) 3,480億ドル
- 一人当たりのGDP(名目) 4,244ドル
- GDP成長率 マイナス5.98%(2020年IMF推計)
- 物価上昇率 プラス34.22% (2020年IMF推計)
- 失業率 16.3%
- 原油埋蔵量 世界4位 生産量世界5位
- 天然ガス埋蔵量 世界2位 生産量世界3位
マイナスのGDP成長率、3割を超える物価の上昇、二ケタ台の失業率とどれをとっても暴動レベルです。これを抑え込んでいるのですから圧政でしかありません。他国に攻め入っても、国内部が腐っていくタイプで、いずれは政治に大きな変化が起きるでしょう。ただ、いつかは判りません。