夕食を妻が作っている。良い匂いも漂ってくる。
お、今夜は焼き魚か。サンマならいいぞ、ホカホカご飯と食べたらさぞうまかろう。その前にビールが飲めたら最高だろう。
しかし、それをわたしは待てないのである。
それで、妻の背後の食器棚の戸を引いて棚の中を見て、お菓子をゴソゴソと探る。そして取り出す。それを横目にして妻が諫める。
『ちょっと、もう少しで食事だというのに。お菓子はないやろ?』
その指摘は、尤もであるけれど料理が食卓に並ぶまで、それが案外と長く感ぜられる。そう、数時間後くらいに感じてしまう。そこで、叱られながらも、何ぞなか継ぎとして美味し今を凌ぐによいお菓子はないかいな?
となる。
■ 妻にすれば
妻にすれば、何で出来るまでにお菓子で腹を膨らすのか?子供じゃあるまいし待てないのかと疑問だろう。ご飯ももう15分もすれば炊き上がるというのに。その匂いもしきりにするではないか。
作っている妻は、あきれてしまうが、少しならいいだろうという顔もするので、昨日買った焼きアーモンドをポリポリとかむ。もう少しか残されていないかのように、さも惜しむように。
しかし、昨日買ったばかりだからまだまだたっぷりとある。
あんまりポリポリと繫く口に入れると、いよいよ妻は怒り出すに違いない。
そんなことを考えながら、所在無げにアーモンドの入っている袋の裏面の、栄養構成や製造年月日などを、見るもなしに見ている。