聖護院 京極のブログ

天と地の間に新しいことなし(ことわざ)・・・人間の行動は今も昔も変わってはいない

韓国の量的緩和の危うさ

 

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画像出典:money voice

 

韓国が『量的緩和』に乗り出しました。史上初とのことです。しかし、ウォンの為替市場に悪影響を与えるだけで、殆ど効果が出るとは思えません。

 

量的緩和は、すでに日本、アメリカ、ヨーロッパでも行われています。しかし、これらの国において量的緩和の単独での成果といえば殆どありません。

 

【韓国】韓国銀が史上初の量的緩和策 新型コロナ対策、金融安定下支え

韓国銀行(中央銀行)が史上初めて、市場に資金を無制限に供給する「量的緩和策」に乗り出す。来月から3カ月間、金融機関向けの資金供給オペ(公開市場操作)を実施する計画だ。大量の資金を市場に流し込むことで、金利上昇や流動性に対する不安を和らげ、新型コロナウイルスの感染拡大で動揺する金融市場の安定化を図る。

(中略)

今回は、電気やガス、道路などの国営企業が発行した債券も買い入れの対象に含めた。

(引用ここまで。続きは下記のリンクへどうぞ)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200327-00000011-nna_kyodo-kr

 

■ 量的緩和の目的

では、なんの目的で『量的緩和』を行うのでしょうか?

量的緩和』は、市中におカネを大量に供給することによって、デフレによる金利高感を抑える目的があります。おカネを企業や国民が借り易くするわけです。

しかし、デフレ社会では、企業は工場建設や機械設備への投資より、国民はモノを買うことよりもおカネで持っていようとします。おカネを持っていれば、ほぼ自動的に、モノの値段が販売競争で安くなるからです。

 

また、企業はモノを国民が買わないで、おカネを持っていようとしているのを見れば、新たな工場の建設や機械などの設備にカネを使っても、需要は起きず競争が激しくなるだけだと知っており、投資をしようとはしません。

 

逆に、インフレはおカネよりモノの方に値打ちがあります。なぜなら、インフレはおカネの値打ちがモノより下がるからです。不動産に投資がその最たるものでしょう。つまり、企業も国民も、おカネを使ってモノを買うことに走りますので、おカネの値打ちは下がります。

 

 

■ 量的緩和と政府に要る財政出動がセット

従って、企業も国民もおカネを使わないので、代わりに政府がお金を使って、需要を作りだそうとするのが財政出動です。それによって、企業が潤い、企業が使う資材関連会社やの関連産業、雇用などに、おカネがを回るわけです。その好循環を作りだすのが、財政出動です。そしてそれをサポートするのが、量的緩和なのです。

 

 

■ 韓国の量的緩和

韓国が量的緩和を行ったとしても、日本やアメリカ同様に効果を期待できません。韓国は企業負債も個人負債(家庭負債)も膨大です。従って、韓国の内需は殆どありません。何かを新たに買うにも負債だらけなのですから、当然です。そこへ、いくら市場からおカネを注いで見たところで、借りて使おうとはしないでしょう。

 

日本国民の負債は韓国ほど大きくはなく、また、企業に至っては、巨額の現金を積み上げています。もし、必要や財政出動が伴えば国民や企業がおカネを使いだす事は可能です。日銀は量的緩和を推し進めていますが、肝心の財政出動が無いのでは、どうにもなりません。

 

 

■ 韓国の財政出動

韓国政府は当然そのことは理解しています。そのため、財政出動を行なおうとしてはいます。しかし、そのおカネの工面に、これ以上大幅には国債を発行できません。国内企業にも国民にも先に書いた通り、おカネがありませんから、国債を国内で消化出来ません。どしても外国が買ってくれるのを期待するしかありませんが、ウォン建て以外(ドル建て)になりますから、ウォン安になると返済がきつくなります。

 

そこで、文政権は、福祉予算や国防予算をつまみ食いする形で、資金を捻りだそうとしています。しかし、これは、こちらで使う予算をあちらに使うというだけのことで、総額として使われる金額が増えたわけではありませんから、その効果は無いといって良いでしょう。

 

 

■ 韓国の輸出比率

韓国の内需がないと書きました。それは、GDPに対して、輸出比率を見れば納得が行きます。GDPに対して、なんと韓国では70-75%が輸出に回っているのです。韓国の生産しても、誰も買わない、買い手がないから、輸出をするしかないのです。

 

その点でいえば、日本は輸出比率は毎年15%程度に収まっています。しかし、日本においても国民の貧困化が進み内需は足踏み状態なので、GDPは殆ど伸びません。

 

 

■ 外需もコロナで落ち込んでいる

韓国は中国が最大の輸出先です。なんと輸出の25%を占めており、中国の動向は大きく経済に影響を及ぼします。中国が咳をすれば韓国は入院しなければならない位に重要です。これだけ、中国に依存して居れば、媚中(中国にこびること)になるのも止むを得ません。

 

その中国が、米国と経済戦争をし、かつ新コロナウィスによる経済活動の低下が著しい現状では、韓国だけがコロナに打ち勝って、経済活動を再開しても中国に需要がありません。米国にも、日本にもヨーロッパにもです。

 

 

■ 量的緩和は、通貨安に拍車をかけるかも

そういう中で、韓国内にウォンが大量に流通しても、それで金利が下がる効果が出ても、借り手がなければ、その意味を持ちません。それどころか、ウォンが韓国内に溢れれば、予想の金利以下に下がり、ウォンを持っている旨味はありません。ウォンで持っているより、ドルの方がずっと安全です。

 

ウォンの金利が下がれば、結果としてウォン売りを促進させ、需要と供給のバランスが大きく崩れる可能性が高い。

 

一般的に言って、平時であれば、通貨安になれば輸出が有利になり、貿易も黒字が出てくる効果が期待できます。しかし、今はどの国にも需要はありません。

 

そのうえ、韓国経済が現状で、サブプライム時のような最悪状態であれば、外資は自然と韓国から撤退するしかありません。これは、悪意があるとかの問題ではなく、投資をしても回収の見込みがないのですから、仕方のないことです。

 

更に、その上に今回のような量的緩和でおカネを市場に流せば、更に値打ちは下がります。

 

このようになれば、韓国は外国からの借り入れているおカネを返すことがだんだん厳しく成ってきます。借りたお金はドルで、その金額がドルに置いては変わりませんが、ウォンが値下がりするに連れ、ドル買い、ウォン売は拍車がかかります。

 

 

■ 為替変動を睨んだ外資の投機

韓国の現状の通貨安を利用して、一儲けしようとする外国の投機筋もいます。株における「空売り」を仕掛けるのと同じやり方です。わかりやすく言えば、ウォンをある日売り、後日、更に安くなったら買い戻して利益を得るやり方です。

韓国政府は、ウォン安を抑え安定させるために、外貨準備からおカネを出してウォン買いを行います。ドルを売るわけです。投機筋はこれとは反対売買を行います。少しづつ儲けながら、韓国政府の外貨準備高を睨んでいずれ、大量のウォン売りを仕掛けてきます。

 

その時、韓国政府は、ウォンの防衛が出来るでしょうか?

 

 

■ 過度のウォン安になると通貨危機

ウォン安が過度に進めば、韓国が外国から借りたおカネ(ドル)が返済不能になりかねません。国内物価は高騰し、400gの肉を買うのに一輪車一杯のウォンを支払わなくては手に入らないという、笑えない事態になる事があり得ます。

 

そうなれば韓国政府の外国からの借り入れは膨大になりすぎて、返せなくなる、いわゆるデフォルト(債務不履行)と進むかも知れません。それは、どうしても避けなければなりません。これまで、極端なウォン安が怖くて、韓国はどの政権も量的緩和は禁じ手として来ました。

 

それを、あっさりと破ったのが現ムン大統領です。IMFからは、新コロナウィルスで経済的に援助しなければならない経済の弱い国が続出している現状では、韓国がデフォルトに陥っても助けることは出来ない言われています。それなのにこのような禁じ手を出してしまいました。

 

この先ウォン安がどれくらい進むでしょうか。5月15日の世界でのウォンの終値

1ドル=1228ウォンでした。すでに危険水域の浅瀬に足を入れています。1400ウォン程度になれば、深瀬に足をとられ、急速にウォンが売り込まれて一気にデフォルトが目前となる恐れも十分にあります。

 

 

■ 通貨スワップの必要性

韓国には通貨安への備えに基軸通貨国との通貨スワップが必要です。しかし、アメリカともユーロやポンドあるいはスイスフランとも、日本とも通貨スワップを持っていません。日本とは関係悪化で期待薄ですので、アメリカに何とか交渉を早急に進めなければなりませんが、アメリカも今の韓国の政権はうまくやれていません。

 

一体この先どうするつもりなのでしょうか。

 

『何、なるようになるさ』では、国民は堪ったものではありませんが、支持率が75%もある現状では一蓮托生も致し方無いのかも知れません。