違いは何か? 免疫と抗体
新型コロナウィルスに関する記事でよく目にするのが、「免疫と抗体」の二つです。両者についてみてみましょう。当ブログは主として、中外製薬のホームページを参考にしています。一部引用部において、言葉尻を変えていますが、文と趣旨を変更したものではありません。(着色文字部分)
■ 免疫(免疫システム)とは
「免疫」とは文字通り「疫(伝染病)」を「免(まぬがれる)」ことを意味する言葉です。たとえば、一度「はしか」などの伝染病にかかったほとんどの人はその伝染病にかからなくなります。これを「免疫ができた」と言います。
この免疫システムは、体内に侵入した細菌やウイルスなどを異物(自分以外のもの)として攻撃することで、自分の身体を正常に保つという大切な働きをします。
免疫(免疫システム)は自身の体を守る兵士のような存在で、誰の体にも備わっています。
自分の身を守るように働く免疫は、自然に備わった防御システム。免疫は、抗体が主役になる免疫と、免疫を担う細胞が中心になる免疫の2つに分かれていて、抗体が主役になる免疫は液性免疫、免疫を担う細胞や物質が中心になる免疫は細胞性免疫と言われています。
次に抗体の説明を行ってから、免疫(免疫システム)の詳細を説明したいと思います。
■ 抗体とは
抗体は、特定の異物にある抗原(目印)に特異的に結合して、その異物を生体内から除去する分子です。抗体は免疫グロブリンというタンパク質です。異物が体内に入るとその異物にある抗原と特異的に結合する抗体を作り、異物を排除するように働きます。
私たちの身体はどんな異物が侵入しても、ぴったり合う抗体を作ることができます。血中の抗体は異物にある抗原と結合すると貪食細胞であるマクロファージや好中球を活性化することで異物を除去します。
■ 免疫(免疫システム=免疫の仕組み)について
これまで、述べてきた免疫(免疫システム)をまとめますと、元々体に備わっている、自然に備わっている免疫システム(自然防御システム)には次の2種類があります。
① 抗体が主役としてはたらき免疫が機能する(液性免疫という)
② 体にある細胞や物質が中心とした免疫が機能する(細胞性免疫という)
①の説明
ウィルスや異物が体に入ると、マクロファージという見張り役兼兵士が、ウィスル免疫細胞の免疫司令官であるT細胞に報告します。
するとT細胞の司令官はB細胞という細胞に抗体を作れと命令します。B細胞はウィルスなどの異物にぴったりくっ付く抗体を作りだします。この抗体がウィルスの攻撃するときの同士である補体(ほたい=タンパク質)と連合軍を組みウィルスや異物にぴったりとくっ付くマーカーになります。マクロファージはその目印に攻撃をし、最終的に勝利を納まます。
②の説明
ウィルスや異物が体に入ると、マクロファージという見張り役兼兵士が、T細胞という体の免疫細胞の司令官であるT細胞に報告します。(ここまでは①と同じです)
すると司令官は、キラーT細胞にもウィルスや異物を攻撃せよ命令します。キラーT細胞は異物を攻撃をして最終的に勝利を納めます。
以上において、もし、薬物や①でも勝利できず、②でも勝利が出来なければ、人は死に至ります。
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これが、人間の本来のウィルスや異物の体への侵入に対する、免疫システムです。免疫のためには、①だけでなく②も同時に働いていると思われますが、そこの相互の守備範囲が、今の医学では詳しくは明らかになっていません。
■ 新型コロナウィスに感染した人
新型コロナウィルスに感染し投薬や自身持っている本来の強力な自然免疫力で回復した人の殆どは、免疫(=免疫システム)を獲得したことになります。免疫を獲得した人は、新型コロナウィルスが再び体に侵入しても、すぐさま①や②の方法で攻撃して同ウィルスを消滅させてしまいます。
しかし、例外的に免疫を獲得出来ていない人もいます。また、新型コロナウィルスに感染していない人は、免疫システムを持っていません。即ち、感染していないのですから、抗体を持っていないのは当然です。そこで抗体ワクチンが必要となるのですが、それは後述します。
その前に、抗体はどのように新型コロナウィルスを攻撃するのでしょうか?それを次に述べます。
■ 抗体は攻撃すべきウィルスのマーカーになることが使命
①の説明のように、体に新コロナウィルスが侵入しますと、マクロファジーという見張り役兼兵士がT細胞という司令官に報告します。司令官はB細胞にすでに備わっている新型コロナウィルスの抗体の生産を始めよと命令します。
こうして生産された新型コロナウィスに対する抗体と同士である補体とがいち早く見つけ出して、ウィルスに付着して、マクロファジーという見張り役兼兵士に
『こいつがやっつけるべきウィルスですよ』
とわかるように自らマーカーとなります。
すると、マクロファジーという見張り役兼兵士は
『わかった。そのマーカーを攻撃するよ』
といって、攻撃し、やっつけることになります。ここで、抗体はウィルスと共にマクロファジーに攻撃され死んでしまいますが、これでウィルスは退治出来ました。抗体はどんどん体の中で作られるので、死者累々ということでしょうか。
ただし、抗体はこれまで述べてきた作用一つだけではありません。下記の①から④までも抗体が作用します。一般的に抗体と言っているのは①である場合が殆どですが、抗体ワクチンを作る際には、この4つに対して安全であることが必要です。特に4つ目。
① 異物(抗原)の中和作用 抗体によりウィルスなどの異物を無害化作用。
② オプソニン化 マクロファージなどに食べられやすくする作用
③ 細胞溶解 ウィルスなどが持つ防御壁を壊す作用
④ 炎症の誘発 ウィルスが肥満細胞に接すると、アレルギー物質を出す炎症する
■ 感染する前に感染したことと同じに体をする
新型コロナウィルスに感染して回復した人でないと、抗体を体に持ち得ないのであれば、地球上の人間がすべて新型コロナウィルスに感染して、回復をしなければならないことになります。そんなことになれば大変なことになります。抗体を持つまでに重症になり、死んでしまう人も多数です。
そこで、抗体ワクチンを接種することになります。抗体ワクチンを人間に接種することは、つまり早くいえば「新型コロナウィルスの予防接種」することです。あの痛い注射を受ける必要があります。
■ ワクチンは外観がそっくりで、空っぽの新型コロナウィルス
ワクチンは、新型コロナウィルスに感染した人から新コロナウィルスを取り出して、無害化し、培養します。無害化とは新型コロナウィルスの遺伝子情報などのウィルスが体の中でどのように活動すべきかを記録された指示書のようなものを、取り除いたものです。新型コロナウィルスに外見はそっくりでも中身は空っぽです。いわば、新型コロナウィルスのそっくりさんです。
B細胞は新型コロナウィルスそっくりさんを本物であると認識し攻撃すべく、抗体を作ります。これによって、新型コロナウィスルに感染することなく、抗体を体に持つことに成功しました。
ワクチンの働きは、述べてきたように、新型コロナウィルスの抗体を新型コロナウィルスに感染することなく作り出すことであることが分かっていただけたと思います。
■ ワクチン接種を受けたら新型コロナウィルスにかからない?
ワクチン接種による抗体が体に出来たとしても、新型コロナウィルスに感染します。しかし、抗体がすでに出来ているので軽症で終息します。それは、インフルエンザの時と同じです。
このようにワクチン接種は必ず受けるべきものであることが理解出来たと思います。
■ 抗体の暴走(免疫の暴走とも)
人によっては、新型コロナウィスルに感染して、重症化することがあります。この場合、ウィルスが大量に発生しており、人の体がパニックを起こすことがよくあります。そうなると、抗体をウィルスに対抗するために、大量に生産し正常な細胞にまで攻撃してしまい、患者がより重篤化することがあります。これが、抗体の暴走(免疫の暴走)です。
ワクチンの場合でも、同じ量を摂取しても人によりこのような反応を示すことがあり、ワクチンの臨床は慎重に行われなければなりません。
■ 新コロナウィルスが変異したときは?
新型コロナウィルスが、変異することはありえます。その時は素早く、変位にあったワクチンを用意することになります。それは、すでに新型コロナウィルスの抗体を持っている人が、変異した新型コロナウィルスに、体にある抗体では対抗できないと確認されれば、新たにワクチン作る必要があります。