新コロナ感染、重症者は陰性後も肺炎続く
これは、下部に紹介する神戸大学の研究発表の結果です。長いタイトルの記事でしたので、少し筆者が端折(はしょ)りました。
■ 中和抗体とは
ここで解りにくい言葉は『中和抗体(ちゅうわこうたい)』という言葉かなと思います。専門的な用語では抗体と我々が読んでいるものは殆どの場合『中和抗体』を指しています。人間の体の中では、いろいろな部署が合計5つ作用の抗体を生産します。
そして、それらが、次の4つの作用をもっています、最も代表的で知名度の高いのが『中和抗体』、いわゆる抗体です。
① 異物(抗原)の中和作用 抗体によりウィルスなどの異物を無害化作用
② オプソニン化 マクロファージなどに食べられやすくする作用
③ 細胞溶解 ウィルスなどが持つ防御壁を壊す作用
④ 炎症の誘発 ウィルスが肥満細胞に接すると、アレルギー物質を出す炎症する
中和抗体とは異物(抗原)の中和作用をするので、中和抗体と特別に呼ぶわけです。
新型コロナウィルスに感染した人が、回復(陰性化)した場合はこの抗体(中和抗体)が出来ており、再び感染するとしても、軽傷で回復することが殆どです。しかし、感染して重症化した人は、当然、新型コロナウィルスの密度が高く、その分対抗する抗体も密度が上がります。
■ 重症化で残る肺炎
重症化して肺炎を起こしてしまった場合は、重傷者が回復(陰性化)すればそれでよいのですが、肺炎は完治せずに続いているということが分かったというのが今回の発表の内容です。
『抗体の力でウイルスを排除した後も、細胞から分泌される「サイトカイン」が過剰放出され、肺炎が長引くことも分かったという。』(記事文)
■ サイトカンとは
このサイトカインとは、免疫系が異物(ウィルスなど)の侵入で警告を出すために産生する物質で、免疫細胞を召集して感染箇所を攻撃するよう働きかけます。しかし、新型コロナウィルスが人体内で大暴れすると過剰反応してしまい、一番感染度の高い肺の健康な細胞まで誤攻撃してしまいます。
■ 重症化を防ぐためには
そこで、高齢者や持病のある人など新型コロナウィルスに感染した場合、重症化を防ぐためには次のような治療薬の投与が必要であるとしています。
『重症化を防ぐためには、高齢者や基礎疾患のある患者に対して、ウイルスが増殖する早期に中和抗体を含む血漿や、抗ウイルス剤を投与することなどを提唱した。』
COVID-19重症者における中和抗体およびサイトカイン産生量の解析 ~重症者は新型コロナウイルスに対する高い中和抗体を産生する~
2020/08/12 医学研究科附属感染症センター
神戸大学大学院医学研究科附属感染症センター臨床ウイルス学分野の森康子教授らの研究グループは、さまざまな重症度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の血清を国内で初めて多面的に解析し、すべての感染患者において新型コロナウイルスに対する中和抗体が産生されており、重症度の高い患者ほど中和抗体価が高いことを明らかにしました。
中和抗体産生に伴い、PCRにてウイルスゲノムは陰性になりました。さらに、重症度の高い患者ほどサイトカイン・ケモカイン産生量が多いことも明らかになりました。
今回の結果は、重症化の可能性が高い高齢のCOVID-19患者に対しては、ウイルス増殖を抑えるために早期に血漿療法(抗体療法)や抗ウイルス剤投与を、一旦重症化した患者に対しては、ウイルスが排除されていることを確認した場合に限って、ステロイドなどによるサイトカインストームの抑制が重要であることを示唆すると考えられます。
(引用ここまで。全文は下記のサイトでどうぞ)
https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2020_08_12_01.html