ロシアウクライナの現状と今後
ロシアのウクライナ侵攻は理由が何であれ独立国家の主権を踏みにじる侵略行為です。これは国際法違反であることは、誰しもが認めるところです。自国を防衛する戦いをするウクライナにも国際法上の自衛権という権利があります。
しかし、此処に至った事態を一方的にロシアを批判するのではなく、もう少し冷静に双方の取った行動を考えてみる必要は有るかと思います。
■ ウクライナは戦争開始回避の努力をしたのか
ロシアが政治と軍事で欧米から中立の立場を取ってくれることを要請していたのに十分な対話を取らないまま、突っぱねた事にも問題はあります。中立を守ることがそれ程困難な事とは思えないから。
それに侵攻が始まるまで最後の最後まで対話をして、ロシアを思い止まさせる努力をしていない。
むしろ、アメリカやNatoから軍事顧問や軍備品のテクニカルアドバイスを受けるなど、臨戦態勢を整えていました。戦闘機を温存するために、基地から移動して隠すことも行っていました。
これらは、アメリカやNatoの後ろ盾の約束があったから行ったことで、そうでなければ軍事力ではウクライナは到底及ばない差があって、ロシアの要請を突っぱねることは出来なかった筈です。
■ 欧米の後ろ盾
欧米とウクライナのゼレンスキー大統領らはロシアが本当に侵攻してくるかは、おそらく半信半疑であったと思われます。しかし、ロシアは毅然と行動を起こした。
その時であっても、まだ対話の余地はあって、ロシアの侵攻を止められる余地はあったでしょう。
それをしなかったゼレンスキー大統領には、ロシアとの交戦で自国民の多くが死に、傷つき、自国の国富である建物やインフラが大きく棄損する懸念があっても、敢えて抗戦する道を選んだと考えたととるしかない。
それは、欧米からの軍事援助があると踏んでいたからで、あわよくば欧米が参戦してくれるかも知れないと考えていたでありましょう。
■ プーチンの戦術核の発言
しかし、その目論見は、プーチン大統領の戦術核の使用の可能性発言で一挙に霧散しました。アメリカは、核保有国とは交戦しないとへっぴり腰になり、Natoは青ざめた。
その後は、専ら後方支援の黒子対応でしかなかった。ゼレンスキー大統領は、欧米のこのような対応を強く批判したけれども、今となっては遅い。大体、安全保障条約をどこの国とも結んでいないウクライナには大きな見込み違いがあったというしかない。
安全保障条約を結ばずのウクライナに軍隊を送ればそれは、国際紛争に発展し収拾は殆ど難しくなる。アメリカもNatoもロシアと今は戦うことはあり得ません。アメリカもNatoにも自国をロシアから攻撃されているわけではないのだから。
ゼレンスキー大統領は、もっと効果的な軍事品をよこせと言い続けている。ドローンや戦闘機、戦闘ヘリなどを。しかし、これをアメリカやNatoが要求に充分な供与すると、ロシアは本気で小規模な戦術核を使う可能性は十分にある。
■ まずは、西欧へのガスと石油の供給停止
戦術核は最後の最後まで温存するでしょうけれども、西欧へのガスと石油の供給停止は小さな国から始めるだろうし、始まってもいます。それは侵攻前に予見できたことで、欧米はこの戦いをそれでも進める決断をしました。欧米にロシアの供給停止に対する対応の目算があってやったことであった筈です。
しかし、そんなものは実際には何もなかった。おそらくはプーチン大統領がウクライナに本当は侵攻しまいと踏んでいたに違いない。ところが、侵攻は始まってしまった。ロシアに天然ガスなどを大きく依存しながら、敢えて危ない橋を渡った訳です。これは欧米の明らかな見込み違いであり、失策です。
ロシアはこれ以上ウクライナに肩入れを欧米がするなら、相応の覚悟をしろと恫喝をしているので、輸出で外貨収入の道が閉ざされても、ガスや石油の供給ストップは行うでしょう。
供給ストップはロシア依存の高い小国にはダメージが大きい。経済が立ち行かなくなるのは目に見えている。そして、同じNatoの国に泣きついたとしても、どこも似たようなもので誰もそれを助けることは出来ない。おそらく、Natoの結束を切り崩しにロシアは出ている。その手は、至極当然です。
小国から、欧州随一の経済大国ドイツにもいずれその手口は及ぶ。エネルギーの30%超えるロシア依存のドイツは、今でも苦境に立たされています。これは、自らがロシアに制裁を科すという意味あいでの輸入規制で生じたものですが、ロシア側から全面ストップとなれば、その経済的影響ははかり知れません。
今まで、日本よりはるかに平和ボケして、守銭奴のようにお金をかき集めていたドイツも、それを吐き出すしかない時が来たようです。
さて、ロシアが戦術核を使う前に、捨て身の天然ガスの供給ストップの札を切れば、欧州の結束は崩れるしかないかも知れない。しかし、今更にウクライナから手を引くことも出来ず、盟主アメリカに泣きつくしかないでしょう。
それにしても、ロシアへのエネルギーの依存度がこれ程高いのに、ウクライナの後ろ盾になったのは、ロシアを甘く見過ぎていたからに他なりません。
■ 欧米にはウクライナを助ける義務と責任がある
欧米にはウクライナの後ろ盾となっているのであり、戦いの終結まで援助し続ける義務と責任があります。ウクライナにどのような被害が累積しようとも、終戦復興までを、完遂するところまで援助することとなるでしょう。
それでも、失われた人命は戻ることはありません。そもそも、欧米がこれ程にウクライナに肩入れをする根拠は、殆ど無かったのです。
■ 日本は欧米と立場が違う
日本は、ロシアの主権侵害行為を認める訳には行きません。見過ごせば、現状で北方領土を不法占拠しているロシアの行為を認めることになるからです。そして韓国の竹島の不法占拠も。韓国がロシア批判を渋る理由はここにあります。
また、ウクライナの民間人の多数の犠牲者から目をそらすことも出来ません。
それ故、欧米と部分的に共有と協調を取ることは必要でしょう。また、人道的援助も無くてはなりません。
しかし、欧米と日本とは基本的に立場は違います。欧米はウクライナの後ろ盾であり後見人です。この戦いはこの両者が始めた事です。そこに第三者的な立場の日本が前のめりに入り込んでロシアを必要以上に刺激する必要はありません。
ロシアの政治経済的な弱体化は日本にとっては朗報です。ここは、少し距離を置いておくべき時です。もし、ロシアが弱体化すればロシア自身の戦後の復興で北方領土などの解決が比較的容易に行く可能性もあります。あくまで可能性ですが。
■ ロシアが弱体化すると
ロシアがこの戦争で弱体化することは疑いの余地はありません。
その場合、北朝鮮が影響を受けるでしょう。
戦争終結後は、欧米は今度は中国に目を向けることでしょう。中国は現状で国土と主張している凡そ半分は不法占拠していることは案外知られていません。中国が、ロシアを非難しがたいのは、このためです。そのためにも、ロシアの弱体化は日本にとって非常に望ましいし、次に来るであろう中国へのアメリカの弱体化にも日本は利益の方が大きい。
■ 総括すれば
しかし、ロシアウクライナの戦いがどのような結末になるかは、全く見通せません。世界中がロシアを非難しているのは人道上の事であって、中東やアフリカ、東南アジア、中南米は交戦自体には非難はしていません。
それ故、世界中がロシアを非難している訳ではないのです。
どのように終わろうとも、核が使用されることは避けねばなりませんし、プーチン大統領以外のロシアの軍や政治の中枢部の人達には、それを阻止する理性は残っていると思いたい。
そして、プーチン大統領が核を実際に使用する決断を下した時、多分クーデターが発生し、彼は失脚することになるでしょう。