聖護院 京極のブログ

天と地の間に新しいことなし(ことわざ)・・・人間の行動は今も昔も変わってはいない

愛しても愛しても他人(ひと)の妻

画像出典:四季彩写真館

 

わたしが独身の頃、あるサークルに入っていて、そこへ美人の人妻が加入してきた。わたしより数年は若かった。色白で背が高くうりざね顔の美人だった。

その人妻にわたしは惹かれた。

 

その気持ちが分かったか、そのわたしを見て、同サークルの主催のわたしの恩師が、わたしを不憫に思った、と思う。

 

サークルの後の飲み会で

『あの女性は人妻だしな。君の姿を見ていると「さざんかの宿」のフレーズを思い出す』

『・・・』

恩師は、黙っているわたしを見て続けた。

『愛しても、愛しても他人の妻・・・』

と小声で歌い、

『いい女は他にもおるから』

と慰めるように諭した。少し悲しそうな口調だった。

 

わたしは自分の心が見透かされたことで、返す言葉を持たなかった。酒席のせいも有ったろうが、顔が一瞬激しく火照るのを覚えた。恩師の目にはあの時の、わたしの姿がきっと哀れで切なかったのだろう。

 

その恩師も、数年前に他界なされた。

ふと、ネットで「さざんかの宿」を聞くことがあると、きっと恩師の言葉を思い出す。