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“ごみ”をエタノールにできる革新技術

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画像出典:スマートジャパン

 

“ごみ”をエタノールにできる革新技術、積水化学が実用化へ本腰

2020年04月22日 07時00分 公開 記事出典:スマートジャパン

 

積水化学工業と官民ファンドのINCJは2020年4月16日、米国ベンチャー企業LanzaTech社と共同開発した、微生物触媒を活用して可燃性ごみをエタノールに変換する技術の事業化に向け、実証実験と合弁会社「積水バイオファイナリー」を設立すると発表した。

 

 共同開発したエタノール変換技術は、ごみ処理施設に収集されたごみを一切分別することなくガス化し、このガスを微生物によってエタノール化する技術。大きな熱や圧力を必要とせず、既存プロセスと比べても十分にコスト競争力があるという。積水化学工業は2014年から共同開発を進めてきた。

 

今回、設立する合弁会社ではこのエタノール化技術の実用化・事業化に向けた最終段階の実証を行うため、まず、岩手県久慈市に実証プラントを新設する。2021年度末に稼働を開始する予定だ。

 

実証プラントでは、標準的な規模のごみ処理施設が処理するごみの1/10程度という約20t/日を既存ごみ処理施設から譲り受けて原料とし、エタノールを生産する計画。また、自治体やごみ処理関連企業、プラントメーカーなどのパートナーを広く募るとともに、実証プラントにて生産したエタノールを企業に提供し、さまざまな製品・事業に活用してもらうことも目指す。

(全文を引用しました)

引用元サイトは下記の通りです。

https://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/2004/22/news027.html

 

2014年前から6年越しの研究が実を結びそうですね。

わたしは、こういう画期的な技術の話が、あまり理解出来ないものの大好きなので、つい取り上げたくなってしまいます。

 

プラスチックのゴミが分解されるには、約100年かかるといわれています。英国ではプラ製品の20%以上がリサクルに乗らずに投棄されていますし、日本においては回収率が8割以上とは言うものの、リサイクルは27%程度、7%が埋め立てで、後は熱源用の焼却となっています。

 

結局、本当の意味でリサイクルの技術、つまり、プラになる前の原料に戻ることはありません。人間は何かから何かを造り出すことは出来るのですが、それを逆の流れにして、元に戻す技術は殆ど持っていません。

 

世界の国で、このプラスチックをどうにかしようとする試みは沢山あるようです。一例を取り上げてみます。

 

■ 日本

日本では、慶応大がPETを栄養源として生育する微生物を発見し、世界に先駆けてPETに高い特異性を示す酵素PETaseを発見。しかし、その活性は低く、未だ実用化に耐えうるものではありませんでした。2018年暮に同大と京都工芸繊維大学との共同研究で、ポリエチレンテレフタレート(PET)分解酵素の分解速度を100倍以上に向上させる手法を開発したと報じられました。

 

京都工芸繊維大大阪府堺市のゴミ埋め立て場から土壌を採取し、PET 分解菌を探索しました。PET をテレフタル酸エチレングリコール加水分解し、これらを炭素源として生育していることが分かりましたが、分解に時間がかかる点が難点です。それで慶応大と共同研究へ。

 

紙なのに、水も空気もほとんど通さない。そんな新素材を日本製紙が商品化しました。表面に特殊加工を施した「シールドプラス」という商品。水分や酸素の影響で品質の劣化が進みやすい食品などの包装資材として使えます。材料が紙なので、海洋にあっても何れは分解され無害となります。

たとえ紙でも分解には1年はかかるので、総合して考えればプラよりは良いでしょうが、最良でもありません。分解までの時間、他の環境の汚染、例えば水に溶けるまで漂っている、或いは景観上見苦しいなどがあります。

 

 三菱ケミカル「バイオポリブチレンサクシネート(バイオPBS)」。耐熱性や柔軟性に優れるうえ、土中だけでなく、海水中の微生物でも分解できるのが特徴。原料はサトウキビなどを加工した糖から作る「コハク酸」と石油由来の「1,4-ブタンジオール」。農業用のシートや自治体のゴミ袋などに採用されています。単価が高いのが難点。

 

カネカが手掛ける生分解プラ「PHBH」も、環境対策の観点から有望視。同社が保有する微生物に大豆や菜種などの植物油を“食べさせる”と、体内でPHBHが生み出されるという。石油を一切使わず、微生物による分解率も高いのが特長。この発表で株価が急騰したことがありました。

 

 

一方海外では、知る限りにおいては下記のような研究がなされているようです。ネットでの検索によるものです。

 

■ イギリス

イギリスのポーツマス大学では、慶応大が発見してた微生物を酵素の改良で分解を早める研究を行っています。また、同じイギリスのケンブリッジ大学では、ハチの巣の蜜蝋(みつろう)を食べるハチノスツヅリガの幼虫が、プラスチックも分解できると発見したと発表がありました。約一時間でポリ袋に自分と同じ径の穴を開ける能力があるそうです。

 

■ ドイツ

ユヴァスキュラ大学、ヘルシンキ大学などの共同研究チームが、腐植質(植物が微生物によって分解された最終生成物)の湖に由来する微生物が、マイクロプラスチックを分解して有益なオメガ3やオメガ6脂肪酸に変換していることを突き止めた。

 

■ アメリ

ランサテック社(LanzaTech社は、一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO2)を含むガスを微生物による発酵(注)により、エタノールやブタジエンといった燃料・化学品に転換するユニークな処理法を開発し、当該技術のライセンス供与のビジネス化に取り組んでいます。今回の記事の中のプラ分解の技術の一部に同社の技術が使われています。

 

この他にも、様々な機関や大学、企業が研究を進めていますが、決定的なものはありません。

 

 

今回開発された技術は、ほぼ完全なリサイクルです。しかも、プラゴミが汚れていても問題がないほか、分解する製品が同種であれば、衣類であろうと、プラ容器であろうと同時に処理が出来ます。現状で生産されたプラ、当面生産がされ続けるプラに対しては、大変重要な技術です。その今後の展開は、下記の画像のとおりです。

 

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画像出典:スマートジャパン

 

今回の開発された技術は、最終に出来上がるものはエタノールになります。微生物や他の幼虫がプラゴミを食べてしまっても、何も残らないのも、勿体ない気がしますし、微生物ならともかく、何かの幼虫であれば、その幼虫をどのようにして増やすのか、増やしたあとどのように処分するのかも考えて置かなくてはなりません。

 

 

さて、今回の技術の最終生産物は、エタノールです。エタノールとは、新コロナウィルスで手消毒剤として脚光を浴びていることで有名ですね。

 

花王の解説によればエタノールは次のようになります。

『「消毒用エタノール」という医薬品として、皮膚や手術部位の消毒、医療器具の洗浄消毒などに用いられています。また、種々の添加物成分を混合した製剤(エタノール製剤またはアルコール製剤)として、新指定医薬部外品食品添加物の用途でも使われています。

 

 

しかし、日本や海外の研究も将来性はあるのでしょうが、差し迫った今には届かないものです。当面は今回のような実用的な技術が必要ですし、技術が確立すれば、今度はコストの検証が必要になるでしょう。バイオプラかリサイクルなどの比較において。いずれにしても、プラごみ問題は喫緊の問題です。この実証実験から実際にエタノール使用企業に採用され、プラごみが大きく減量することを期待したいですね。