聖護院 京極のブログ

天と地の間に新しいことなし(ことわざ)・・・人間の行動は今も昔も変わってはいない

抗原・PCR・抗体 各検査の違い

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画像出典:日経メディカル

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/t344/202005/565708.html

 新コロナウィルスに感染しているかどうかの検査には、大きく分けて3つです。上記の図を見れば一目瞭然ですが、少し補足説明をします。

今回の新コロナウイルス検査で一躍有名になったのはその②のPCR検査ですね。

 

 

その① 抗原検査

その② PCR検査(遺伝子検査)

その③ 抗体検査

 

これら3つ検査の違いは何でしょうか。以下の記事は5月30日(土)に三機関から発表されて記事の転用です。(色塗り部分)発表記事の一部を割愛しておりますが、記事自体の主旨を妨げることはありません。

一般社団法人日本臨床微生物学
一般社団法人日本感染症学会
一般社団法人日本環境感染学会 

 

 

 

■ その① 抗原検査とは

5 月 13 日に新型コロナウイルス特異蛋白を迅速に検出する方法が承認されました。イムノクロマトグラフィー法を用いた検査で、検体採取から約 30 分で結果の判定が可能です。

 

普及にはもう少し時間がかかるようですが、6 月には 1 日 2 万検体用のキットが供給される方向で進んでいます。RT-PCR 検査との比較では、行政検査検体を用いた時の陽性一致率が 66.7%、陰性一致率が 100%であるとされています。

 

PCR 検査に比べて、感度が低いことに注意しなければなりません。本法において陽性が得られた場合には確定診断としての意義が高いが、陰性であったとしても完全には本症を否定できないということになります。この成績は鼻咽頭拭い液を用いたものですが、現在、唾液を用いた場合の陽性率に関しても検討されています。

 

 

 

■ その② PCR検査(遺伝子検査)

新型コロナウイルスに特異的な RNA 遺伝子配列を RT-PCR 法等により増幅し、これを検出する検査法です。

感度が高いことが本法の特徴ですが、一般的な短所として、検査時間が長い(1-5 時間)、専用の機器および熟練した人材が必要、高コストなどがあげられます。また、鼻咽頭拭い液の採取による被験者の感染には十分に注意しなければならなりません。

 

 

最近の報告では、唾液を用いた遺伝子検査で鼻咽頭拭い液を用いた場合と同等の陽性率が得られることが報告されています。数日前に書いた、島津製作所の唾液検査方が、これに該当します。

 

 筆者記:

真ん中頃の記述の「咽頭拭い液の採取による被験者の感染には十分に注意しなければならなりません。」とは綿棒を鼻の奥に差し込んで検体を採取しますので、その時被験者(採取される側のひと)が、くしゃみや咳をして、採取者に唾液などがかかってしまうリスクです。

 

 

 

■ その③ 抗体検査

患者血液の中の特異抗体を検出する方法が多数報告されています。通常、特異抗体の産生には感染後 2-3 週間が必要です。

 

新型コロナウイルス感染症の場合には感染から発症まで、発症から受診までで 2 週間ほど経過している症例もあり、このような場合、患者血液の抗体の検出が診断に役立つものと考えられています。ただし、前述の理由により、感染・発症していても抗体検査が陽性にならないことがあることに注意しなければなりません。

 

イムノクロマトグラフィー法を用いて IgM, IgG を検出する方法があり、迅速に、特別な機器を必要とせず、定性試験として陽性・陰性を判定することができます。

 

 

さて、6月1日の東京大学先端科学技術研究センターから、次のような発表がありました。それをまとめますと、新型コロナウイルスの感染歴を調べるこう抗体検査について、31日、簡易検査キットで陽性だった人の約9割が、大型機器による精密検査では陰性だったとする結果を発表しました。キットは、全国の診療所で導入が増えていますが、正確な感染状況の把握には課題があると指摘しています。

 

ここで注意が必要なのは、「簡易検査キット」の「簡易」です。通常の「抗体検査」ではありません。

 

簡易検査キットは、侵入したウィルスに対して、体内の免疫システムが産生する物質(抗体)の存在を検知する検査です。簡易キットで迅速(15分程度)に施行できるというメリットがあるとして、現在よく利用されていますが、このような問題があることが判明しました。陰性を陽性と誤判断するより、陽性を陰性とする方が余程問題ですので、使用は出来るだけ控えて欲しいものです。