唾・砂消し・修正液・修正テープ 修正方法のいろいろ
最近は、政府が音頭を取ってペーパーレスを進めています。まずは行政からでしょうが、いずれは民間も全廃とはいかないものの、それに近いものになるでしょう。
そのような暗い将来ではありますが、わたしはやっぱり印刷されたものを見、確認して書類を出したり、受け取ったりしたい。
そこで、昔の印刷された書類の修正の履歴を時系列的に、取り上げてみました。
■ 唾(つば)付け
印刷されたものは、コピーにとられて配布。原稿は残すようにするのが一般的でした。印刷して、もう一度見直したりすると、所々に誤りや修正したいところが出てくるのは、止むを得ません。そういうものです、誰でも。
しかし、役所などに提出すべき書類が出来上がって、鑑(かがみ)である表紙までつけてから、誤りがあったりすると、
『ええい、唾つけて消したれ』
となって、本当に指に唾(つば)を付けてゴシゴシとしますと、消えますが、そこは黒ずんで見るからに汚いし臭い。書いた文字を消す意味合いより、何が書いてあったかを知られないように、誤魔化す意味合いの方が強かった。
訂正文字は上や下のわずかな空きに蟻の這うような小さな字で書くしかありませんでした。
書くところがない場合は、仕方がないので、上から貼り紙することも。それでも通用する時代でありました。無論割り印はなくとも。
■ 砂消しゴム
指に唾を付けて修正する方法に替わり、砂消しゴム(冒頭の画像)が登場しました。これは、唾で文字を消すという野蛮で非衛生的な方法に、取って代わることが出来た画期的な方法であります。
しかし、唾の代わりに砂になっただけの話で、どちらも消すというよりは紙の表面を薄く削り取るというのがふさわしい。それで、手加減を間違えば紙に穴が開いてしまうことも。
この薄皮を残すギリギリのところまで、削るという技術はそう簡単に取得できるものではなく、年季がいりました。さらに、この上に訂正するべき文字を記入する必要があります。
緊張して、書き入れてそれが間違ってしまった場合は、最早「じえんど」であります。
■ 修正液
続いては修正液の登場です。これは、書類の紙の部分を削るという、いかにも削除を実践する砂消しゴムとは全く違った、新しい着想に基づいて開発された修正方法でした。しかしながら、これは取り扱いが面倒ではありました。
成人の親指程の小瓶に白い液体が入っています。そして、蓋を取りますと、蓋には細い棒とその先端に小さなハケが付いておりました。このハケでもって、誤字の上からなぞると、消えるのです。消えるというか、上塗りして見えなくするというべきでしょう。
そして、修正液が乾くのを待つ必要があります。完全に乾き切らない内に、修正を試みると、修正液が手につくわ、紙についた修正液が半乾きでめくれるわで、パニックになってしまいます。
女性事務員さんが、手についた白い修正液をゴシゴシしているのを見ると本当に気の毒でした。一旦手につくとこれがなかなか取れないのです。当然かも知れませんが。
修正液は乾くとその部分の紙を縮ませ、いびつな書類となります。その上、修正液は、やたらと色白で、紙の色とは別格に白かった。一番白い紙を基準に作られているのでしょうかね。
■ 修正テープの登場
最後に登場し、今後これ以上の修正するものは出ないでしょう。と言えるのは、修正テープです。
誤字を覆い隠すテープの巻きと、使用後のテープを巻き取る二つリールがあります。あたかものテープレコーダのような形になって納まった本体は、持ち易く使いやすいように先細りなっています。
その細った先からテープは出て、消すべき文字の上に写し絵のごとく覆います。残ったテープは巻き取りとなり再び本体の専用リールに収納されます。
なかなかよく出来ています。指も汚れず、紙も縮まないし、穴が開くこともない。その気楽さから、修正文字を入れても、また間違いテープで消すの繰り返しなどで、紙面が盛り上がってしまうこともありました。
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この優れものの歴史も、ペーパーレスの波に飲み込まれて、無くなってしまうのでしょうか。いかにもローテクが故に、記憶に残るものが身の周りから消え去っていくのは、どんなにか寂しい。