炎天が続く夏のことでした。
友人と日本海の海辺の海岸にあるキャンプ場に行って、テントを張り始めた時、近くの民宿からかすかに煙が出ているのを不審に思ったのは、わたし達だけでした。
一般的に、家から煙が出ていても、田舎の生活であってみれば、調理場から煙が立つのも不思議はありません。まして、海辺の民宿であってみれば、ごく普通の光景の筈です。
■ 煙は二階から
しかし、わたし達が不審思ったのは、二階のある部屋からの煙でした。いくつもの部屋があったのでしょう。しかし、煙はその一部の窓からのみフワッと出ていて、その時には火事だというほどの煙の量でもなかったのです。
しかし、タバコの煙の程度の小量でもなく、また白く薄く棚引くようにゆっくりとして途切れることがありません。
■ 次第に増える
煙は、その一か所の窓からのみでしたが、その量は次第に増えてきて、初めて
『おい、あの民宿火事と違うか?』
とわたしがいい、友人も
『これはヤバイ』
ということで、知らせに走りました。張ろうとしていたテントからは50㍍はあったでしょうか。何もかも打ち捨てて。
民宿の開いていた玄関から、
『火事ですよ、火事』
と大声で知らせると
『火事、へえ、どこが?』
当の民宿の人達は、自分たちのこととは気づいておらず、他人ごとのような反応でしたが、
『どこがって、この家ですよ。二階から煙が出ている』
と告げると、驚いて二階に通ずる階段を上ろうとするのを、後ろから必死に引き留める。そこから二階を見ると、赤い炎がいくつかが見えました。そして、白い煙がほぼ一面に立ち込めていました。
■ フラッシュオーバー
民宿の女性は二階に上がるのを諦めて、一階にいる他の人達と共に避難。皆が外に出た時、
二階に設けられていたであろうすべてと思われる窓ガラスが、一挙に割れ飛んで炎が一気に噴き出してきました。いわゆる「フラッシュオーバー」という現象です。
■ 騒然
辺りは騒然となりました。もう、自分たちの手には負えず、茫然と見守るばかりの民宿の人達。わたし達と同じキャプのやじ馬も集まってきました。そうしているところにようやく、自衛の消防車(ぐるま)が一台到着。
すぐさま消火に入りましたが、二階ということで屋外に設けた消火栓からは十分な水圧がないためか水が届きません。
■ 消防署から
消防署からポンプ車が来て、隣家の屋根に登りそこから放水を始まり、どれくらいたったでしょうかようやく鎮火に向かいました。二階はほぼ完全に焼け落ち、一階の一部も半焼となりました。隣家の屋根は、消防活動で瓦の多くが割れ落ち、持ち主は大いに怒っておりました。
消防署は、兎も角も鎮火をすることが最優先なので、致し方ありません。わたしが隣家の人間であっても、同様に怒ることでしょうが。
■ 新聞社
新聞社も意外に早く駆けつけて、目撃者の談をとっておりましたが、第一発見者であるわたし達には、お呼びがかからず、友人が憤慨しておりました。おそらく、一生に一度歩かないかの犯罪ではない出番と思ったからでありましょう。