喧嘩で勝つ方法で最も優れているのは、口だけで勝つことである。
しかし、勝つことなく逃げるに越したことはない、または、たとえ戦って負けても良いのは相手の顔色次第である。
喧嘩をして殴り合いに至るまでに相手の顔が、怒りの為に赤くなる人は謝れば良いが、顔から血の気が失せる人には、謝るほかに逃げた方がよい。忘年会など酒を飲んだ時には特に観察して、相手の言動をみきわめたい。
血の気が引いた人は、頭から思考を巡らす血が引いており、怒りだけになっていると考えられるからである。
それによって、自制心が失われていることが多いからだ。こういう人はよく見て来た。自制心が失われると、誰かが停めない限り相手への暴力や罵詈雑言を留めることは殆ど無い。
しかし、人間以外の生きものの中には、争うことなく欲しい物があってもあきらめて逃げるものも多くいる。それが最上の方法であるのかも知れない。
ただそういう弱者であっても、我が子を守るためには捨て身に近い攻撃をする。それでも叶わないことがある。それでも、人間に於いてもそうあるべきだ。
わたしもそのタイプで、元憲兵であったという人がこう指摘した。
『聖護院くんはムカッと来ると、顔色がさっと変わるね。この子はこわいよ。だが、そういう子が俺は好きだがな』